腿の筋断裂で歩行困難に…それでも立ち続けた武尊

　踏ん張ったのは王者だけではない。挑戦者の武尊もまた、想像をはるかに超える粘りを見せた。

　過去のキックボクシングルールの試合から十分に想像することはできたが、この日もまたスーパーレックは1ラウンドからタイミングよく重いローキックを放っていた。案の定、この攻撃を受けることで武尊は何度かバランスを崩し、効いた素振りを見せている。しかし、そのつどすぐに体勢を整えて王者と向き合った。

スーパーレックの重いローキック。武尊の腿は内出血によって変色している　©ONE Championshiop

　スーパーレックは「ローキックを効かせている感触はありました」と振り返る。

「今回は彼の右フックと左フックにカウンターを合わせる作戦を立てていた。でも実際の試合では向こうがすごく準備してきたので、違う展開になってしまいました」

　スーパーレックはカウンターの名手だ。対戦相手のパンチに合わせてハイキックを決めるといった、他のファイターではなかなか真似できないパフォーマンスも普通にやってのける（当然ながら、腕の振りに対して足でカウンターを合わせるのは難しい）。

　武尊も後ろに下がっていたら、中間距離でのカウンターの格好の餌食になっていただろう。しかし、彼はどれだけ効かされても前に出た。そうすることでスーパーレックは作戦の変更を余儀なくされたのだ。

ローキックを効かされながらも前に出る武尊。試合後には「筋断裂」と診断された　©ONE Championshiop

　ローキックとともに王者の代名詞ともいえるヒザ蹴りも、幾度となく武尊のボディに突き刺さっていた。脚部やボディの痛みが閾値を超えれば、意識がハッキリしていても耐えきれずに倒れてしまう。試合後、歩行が困難になった武尊は救急車で搬送され、「腿の筋断裂」と診断されたことを明かしている。限界を超えていたのは明らかだった。

　にもかかわらず、なぜ武尊は耐えることができたのか。尋常ではないタフネスに、スーパーレックも称賛の言葉を惜しまなかった。

「自分の打撃は強いと自負している。それでも武尊選手は全然倒れなかった。強い選手だと思いましたね」

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