酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
16歳で高校中退→メジャー挑戦「親として同じことが言えるかな」なぜマック鈴木48歳はトライアウトLの顔として活動するか〈オリックス秘話も〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/01/17 11:01
ジャパンウィンターリーグでのマック鈴木氏
あの試合は福岡での3連戦の最終戦で、先発投手だから朝早くからユニフォームを着ることはないじゃないですか。昼になって用意しようと思ったら背番号29がなかったんです。〈わーっ〉と思って、マネージャーさんに電話したら『お前のサイズなら吉井理人さんか、55でいこか』と言われた。それもつらいから、兵庫の幼馴染に電話したら『今から持っていこか』ということになった。うちの母親に電話して、僕の家を開けてもらってユニフォームを持って福岡ドームまで来てもらった。で、プレイボールの10分くらい前に到着した。ぎりぎりセーフで、それがなかったら55で投げてる可能性もありましたね。
〈ユニフォーム届いてよかったな〉と思ったら初回ノーアウト満塁。気持ちの動揺もあったんですが、調子悪いな……って。でもフライとゲッツーで初回を何とか切り抜けて、あとはスイスイ8回まで投げたんですよ。嬉しかったですね(笑)」
カルフォルニアでの人間関係が続いていて
――話は変わりますが、マック鈴木さんが、このジャパンウィンターリーグに参加したきっかけは?
「実は僕、ジャパンウィンターリーグ主催者の鷲崎一誠代表や、このリーグにかかわっているゲームコーディネーター、トレーナーの人たちと、カリフォルニア・ウィンターリーグで出会っているんです」
カリフォルニア・ウィンターリーグは毎年1月後半から2月にかけて、アメリカ、カリフォルニアで行われるトライアウトリーグだ。チーム分けをして1カ月間、リーグ戦でほぼ毎日試合をする。日本からも大学生などが参加している。このリーグからMLBや米独立リーグと契約をする選手もいる。
鷲崎代表は慶應義塾大学時代、1試合も公式戦に出ることができなかったが、このリーグで1カ月プレーをしたことで、4年間の満たされない思いを解消することができたという。マック鈴木氏はこう続ける。
「あの時の仲間は、素晴らしくいい思いができたってみんな言うんです。社会に出てからも、その時の人間関係が続いていて、たまに会うとお酒を飲んで思い出話をしていた。
『あの時は面白かったな』って、それだけで終わっていたんですが、鷲崎代表がジャパンウィンターリーグを立ち上げると聞いて『うまいこといくんかな』と思いながらも、できることは一生懸命協力しようと思っているんです」
16歳でアメリカに…父親として同じようなことが言えるかな
マック鈴木氏にインタビューしたのは、トライアウトリーグの開会式のある日だったが、マック氏はセレモニーが始まるギリギリまで選手たちにノックをしていた。その際、本人にはある意図があったという。