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「あんなのヤオ(八百長)だっぺ」地方出身プロレス記者の記憶…アンドレザ・ジャイアントパンダと映画『新根室プロレス物語』、本土最東端から全国区への情熱
posted2023/12/31 17:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
地方でプロレスファンとして生きるというのはどういうことか。そんな考えが頭をめぐった。
1月2日(火)から東京・ポレポレ東中野を皮切りに全国順次公開されるドキュメンタリー映画『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』の試写を見た時のことだ。
新根室プロレスとは、2006年に旗揚げされた社会人プロレス団体。本土最東端の町で団体を旗揚げしたのは、地元でおもちゃ屋を営んでいたサムソン宮本会長だ。店に集うプロレスファンたちを選手やリングアナ、レフェリーに仕立て、お祭りなどで試合を披露した。
「とにかくサムソン宮本会長のリーダーシップ、行動力が凄かった。我々は驚かされっぱなしで」
そう語るのは、団体の本部長を務めるオッサンタイガー。宮本会長の弟だ。宮本会長は旗揚げにあたり、ヤフオクに出品されていた100万円のリングを購入。お金はみんなで出し合った。創設メンバーの1人であるドンレオ嬢サンは、サムソン宮本会長からこんな言葉でリング購入の誘いを受けた。
「じゃあ10万出せよ。やるぞ、プロレス」
アンドレザ・ジャイアントパンダのデビューで全国区に
身長(体長?)3メートルの巨大パンダ「アンドレザ・ジャイアントパンダ」をデビューさせると、新根室プロレスの知名度は一気に上がった。アンドレザはDDTなど人気団体に出場すると、ムード歌謡コーラスグループ・純烈の新メンバーにも(1日だけ)抜擢されるなど全国区の存在に。地上波の番組にもたびたび登場した。
映画の前半では、アンドレザをはじめ個性豊かなメンバーたちが根室で楽しく試合をする姿が映し出される。彼らが見せるのはコミカルなプロレスだ。オッサンタイガーは言う。
「我々には指導者がいないのでプロレスのビデオ、DVDを参考にしながら、みんなで研究して技を覚えていくような環境でした。リングに上がって初めて分かったんですが、1分間動くだけでもヘトヘトになるんですよ。プロレスラーは凄いというのを、そういうところでも実感しました。奥が深いし危険なものでもある。だから僕たちは、プロの迷惑にならないよう、危険な技は排除してエンタメ性の高い、コミカルな試合を心がけてきたんです。アイディア重視、キャラクター重視ですね」
その中から生まれてきたのがアンドレザなのだ。ちなみに映画のタイトルにもなっている「無理しない ケガしない 明日も仕事!」は団体のスローガン。大会の“締め”では観客とともに叫ぶ。休みの日にはレスラーに“変身”して観客を笑顔にさせ、翌日にはそれぞれの職場に戻っていく。そして仕事が終わると、お金を出し合って買ったリングで練習する。