「大熱戦の末の敗戦なので、その瞬間は堪えたのは間違いないと思います。ただその一方で、藤井さんは苦しい流れの中でもしっかりと力を出しているんですよね」

――もしかすると、あの逆転負けの経験が、八冠獲得なった王座戦での逆転劇の連続にリンクしているのかもしれない。

「そうとも言えます。だからこそ自分自身も、一局ごとに本当に燃え尽きるくらいの意気込みでやらないといけない。そんな気持ちがかき立てられました。藤井八冠から学ぶことは多すぎるのですが、とにかく自分がキャリアの下降線をたどる前に出会えてよかったと心から思います」

再び藤井さんに挑戦する機会を自分で作り出したい

――高見さんは今期順位戦B級2組で昇級争いの真っただ中で、2022年度の銀河戦では決勝で藤井八冠と対局しています。そんな中で自身の棋士としての立ち位置や信念について、ふと頭によぎる時があるのでしょうか。

「表現は少し難しいのですが……自分の中では少し嫌だなと思うのは、たとえば勝率が6割～6割5分くらいをキープしたとしても、その1年間で何らかの成果がないことです。21年度は順位戦昇級、22年度は銀河戦決勝までいけましたが、大事な一局で結果を残せるかどうかの勝負強さは、大事にしているバロメーターの1つなんです」

――なるほど。

「ここまで話に出てきた棋士の方々は、順位戦A級、タイトル戦など常に高いアベレージで力を発揮しています。そこに敬意を払いつつも、自分自身はチャンスがある公式戦でなんとかベスト4、決勝と昇っていきたい。それを積み重ねて、再び藤井さんに挑戦する機会を自分で作り出したい。心から、そう思っています」

＜第1回、第2回、第3回からつづきます＞

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「99％負けのはず」藤井聡太21歳八冠ピンチで大逆転「大胆で…震えました」タイトル経験者・高見泰地と振り返る〈藤井将棋の一手2023〉