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1位・岡本和真でも3位・村上宗隆でもなく…急上昇2位・大山悠輔が「阪神打線を機能させた」主砲なワケ〈セ打者:貢献度指標ランキング〉
posted2023/12/31 11:08
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki/Hideki Sugiyama
「A.R.E.」で幕を閉じた今年のNPB。打線に目を転じれば、今季のセ・リーグは「出塁率」「選球眼」が大きくクローズアップされた。
阪神の岡田彰布監督は「安打と四球は同じや」として、フロントに査定の見直しを要求したと言われる。
「安打と四球は同じ」とは、セイバーメトリクスの開祖、ビル・ジェームズが半世紀近く前に提唱した考え方だが、NPBでは永らく「初球から打っていく積極打法」も評価されていた。しかし、岡田監督の「出塁率重視」は、確実に勝利に結びついた印象だ。
「安打と四球は同じや」で阪神打線は劇的に変わった
2022年と2023年のセ・リーグ6球団のチーム打撃成績を見ていこう。
打撃の総合指標であるRC順、一般的な本塁打、打点、盗塁、打率に加え、出塁率、さらにセイバー系の指標であるIsoD(Isolated Discipline)も表示した。これは「出塁率-打率」で求められる。四死球だけによる出塁率で、岡田監督が重要視した数値である。
〈2022年〉
ヤクルト: RC 630.43/174本 606点 69盗 率.250 出.318 IsoD.068
巨人: RC 579.5/163本 533点 64盗 率.242 出.309 IsoD.067
DeNA: RC 539.44/117本 477点 49盗 率.251 出.308 IsoD.057
広島: RC 531.84/91本 524点 26盗 率.257 出.309 IsoD.052
阪神: RC 491.04/84本 462点 110盗 率.243 出.301 IsoD.058
中日: RC 489.09/62本 397点 66盗 率.247 出.301 IsoD.054
〈2023年〉
巨人: RC 591.93/164本 511点 48盗 率.252 出.308 IsoD.056
阪神: RC 563.07/84本 534点 79盗 率.247 出.322 IsoD.075
ヤクルト: RC 541.05/123本 509点 62盗 率.239 出.310 IsoD.071
DeNA: RC 530.9/105本 503点 33盗 率.247 出.305 IsoD.058
広島: RC 495.52/96本 476点 78盗 率.246 出.304 IsoD.058
中日: RC 425.99/71本 370点 36盗 率.234 出.285 IsoD.051
阪神の本塁打数は昨年と同じ84本、中日に次いで少ないが、打点は462点から534点と72点も増加。RCも5位から2位に浮上した。そのカギとなったのが「安打以外の出塁」だ。
2022年のIsoDは.058で3位とはいえ、最下位の広島と.006しか差がなかったが、2023年の阪神のIsoDは.075と急伸。リーグ1位になった。岡田彰布監督の「安打と四球は同じや」は、阪神打線を劇的に変えたと言ってよいだろう。
ただヤクルトのIsoDは、2022年は.068で1位、2023年も.071で阪神に次ぐ2位だったが、優勝から5位に転落。本塁打数が51本も減り、打点も97点減少した。勝利に関連する指標は1つや2つではない。「出塁率を上げる」は、打線立て直しの一つの切り口ではあるが、万能薬というわけでもないのだ。
ここ2年の“打撃貢献度指標トップ20”を見てみると
以下、個人成績の2022年と23年の比較。RC順に20傑まで。*は左打者。