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「ずっとビーチをやりたかった」学生バレーのスター選手が前人未到の挑戦…早大・水町泰杜(22歳)“五輪”よりも二刀流〈高橋藍と同世代〉
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKYODO
posted2023/12/26 17:18
ウルフドッグス名古屋(Vリーグ)とトヨタ自動車(ビーチバレー)のユニフォームを持って新入団会見に臨んだ早稲田大4年・水町泰杜
ルーキーの資質を問われた名将・畑野久雄監督(78歳)は、当時1年生の水町を見て「高校4年生」と称したことがある。当初から自分のプレーだけでなく周囲を気遣い、周りを動かす力があった。いかなる状況でもエースとして逃げず、高い相手や強い相手に真っ向勝負で立ち向かってきた。だからこそ、どんなチームでも常に中心選手であり続けられたのだろう。
その真価は、大学最後の試合となった天皇杯でも発揮された。
早稲田大の相手は日本代表セッター関田誠大を擁するVリーグのジェイテクトSTINGS。ストレートで敗れはしたが、正セッター不在で高いトスが水町に偏り、常に2〜3枚と高いブロックが揃う中を最後まで打ち抜いた。
「最後に(自分へ)サーブが回ってきたので、思い切って打ちました。高校時代からエースとしてやってきて、『最後に上がったボールを打ち込む』というエースにしかできないところをまた経験できた。Vリーグでは外国人選手もいるので、エースとしてここまでの本数が集まる中で打ち込むのはこれが最後。思い切り、打ち込めてよかったです」
水町が大事にしてきた「結果よりも過程」
プレーも実績も十分。なおかつ、先輩に可愛がられる性格で、同期や後輩から「太陽みたいな人」と慕われている。当然、ゆくゆくは日本代表の一員として石川祐希や高橋藍らとともに躍動する姿を期待してしまうが、水町が見る先は少し違う。
「結果ではなく、大事なのはそこまでの過程。その時できる100%をやりきる。簡単ではないし、不安もありますが、とにかく楽しんでやりきれば、結果もついてくると思うんです」
高校時代に初めてビーチバレーに触れた水町にとって、ビーチバレーは常に「楽しいもの」。大学時代から挑戦してみたいという思いをずっと秘めてきた。
これまでインドアで味わってきたものとはまた異なる楽しみを、存分に味わいたい――そう考えた時、“二刀流”という新たな挑戦にたどり着いた。