モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
速い理由は「巨大フライホイール」「独自のデスモドロミック」と…マルケス移籍で注目のドゥカティに速さをもたらすメカニズム
posted2023/12/28 17:01
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
2023年シーズンを締めくくる最終戦バレンシアGP後に、今季最後のMotoGP公式テストが行われた。そのテストでもっとも注目を集めたのは、ホンダからドゥカティに乗り換えたマルク・マルケスだった。予想通り「速いなあ」という結果で、2024年シーズンはマルケスがMotoGPクラスの話題を独占するに違いないと確信した。
とにかく、ドゥカティは速くて安定している。今季20戦を戦い、コンストラクターズポイントでは2位のKTMにほぼWスコアの700点。KTM373点、アプリリア326点、ヤマハ196点、ホンダ185点。この数字を見るだけでもドゥカティの強さを知ることができる。
そんな実績を誇るドゥカティ勢に、たった1日のテストで早くも来季のチャンピオン候補に復活した絶対王者のマルケスが加わるのだから、来季はどれだけシーズンを圧倒するのか注目される。
ドゥカティはなぜ速いのか。過去に空力面のアドバンテージに関する記事を書いたが、今回は観点を変え、エンジンなどメカニクスについて言及したい。
タイム差を一気に縮めたレギュレーション改正
4ストロークエンジン搭載のMotoGPクラスは2002年スタートし、すでに22年の歴史を刻んできたが、大きな流れとしてコンストラクターのパフォーマンスの差をなくし、コスト削減とイコールコンディションを目指すルールが採用されてきた。
それを決定的にしたのが、2012年に採用された「エンジンを1000cc4気筒、ピストンの直径を81mm」とするレギュレーションだった。さらに共通ECUが導入されるなどした結果、予選では1秒差以内に15台前後の大接戦というのが当たり前となり、0.1秒、0.2秒差が勝敗に大きな影響を与えるようになった。
マルケスのような天才ライダーを除けば、2ストローク500cc時代のように「気合、根性」でタイムを出すような時代ではなくなった。ドゥカティはその0.1秒、0.2秒のアドバンテージをしっかり築いてライバルを圧倒してきた。そこには、大きく3つのファクターがある。