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22戦21勝、勝率9割5分4厘…1988年の記録を35年ぶりに更新したホンダがパワーユニットに施した知られざる努力
posted2023/12/15 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
だれも到達できないと思われていた記録が、2023年に更新された。最終戦アブダビGPで勝利したレッドブルがシーズン21勝目を挙げ、年間最高勝率を達成した。
これまでF1のチーム最高勝率は、1988年にアイルトン・セナとアラン・プロストの黄金コンビを擁したマクラーレン・ホンダによる16戦15勝だった。その勝率は9割3分7厘。1950年のアルファロメオの7戦6勝(8割5分7厘)を抜く大記録だった。
その後、いくつかのチームとエンジンサプライヤー(パワーユニットマニュファクチャラー)がこの偉大な記録に挑んだ。
記録に挑んだ者たち
フェラーリはミハエル・シューマッハとルーベンス・バリチェロとともに2002年にこの挑むも17戦15勝に終わり、勝率は8割8分2厘にとどまった。
この次に記録に挑んだのが、ルノー・エンジンを搭載するレッドブルだった。13年にセバスチャン・ベッテルがシューマッハが持つ13勝という年間最多勝利数に並ぶ偉業を達成するも、チームメートのマーク・ウェバーが未勝利に終わり、19戦13勝に終わった。
その後、16年にルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグによってメルセデスが21戦19勝を挙げて勝率を9割台に乗せるも、9割0分5厘とあと一歩及ばなかった。
その不滅と思われた記録にレッドブルとともに挑んだのが、ホンダだった。
ホンダにとって「16戦15勝」という記録は、いまなお特別な記録としてスタッフの胸に刻まれていた。23年からホンダ・レーシング(HRC)のチーフエンジニアとしてレッドブルとともに仕事している湊谷圭祐は、その意味をこう語る。