実際、その4年目にはプロ初勝利を挙げると一軍で30試合に登板。その気合いを前面に出す成績を残した。5年目に向け弾みをつけた格好のはずが、翌年は一軍では1試合のみの登板に終わった。

　そして迎えた6年目。春季キャンプはプロで初めて二軍の西都キャンプでのスタートとなった。

「4年目はあれだけ投げられたのに、なぜか5年目はファームでもパカパカ打たれて。最後にはフォームも横から投げたりしたんですけど……とにかく模索する毎日でした。5年目がそんな状況だったので、（6年目は）西都スタートでもマイナスな感情はなかったんですけど……」

　結局6年目は、一軍での登板はないまま終わった。そして、シーズン後の秋、ふと思った。

「さすがにこれは（戦力外通告の）電話が掛かってきてもおかしくないな」

他の選手の引退試合への道中で受けた「戦力外通告」

　戦力外通告を受けた日のことは今でもよく覚えているという。

「その日、坂口（智隆）さんと内川（聖一）さんと嶋（基宏）さんの引退試合があったんです。その球場に行く途中に掛かってきた。覚悟はしていましたけれど（電話が鳴って）“来た”っていう感じでした。『明日、事務所に来て』と言われて。その後しばらくは、色んな人に何の電話か聞かれて、もう仕方ないんで『自分はクビや』って半分自虐的なネタにしていましたね」

　トライアウトを受験することに当初は迷いがあったという。プロ生活6年間の通算成績は、1勝1敗。そんな自分にオファーがある訳はない。自信がなかった。

　だが、ヤクルトを離れる連絡を周囲に続けていくうちに、何人かから「（投げているところを）どこであっても、もう1度見たいけどね」と言われた。

「それで、受験だけでもしようと思って」

　独立リーグや社会人野球チームからオファーはあった。だが、結局NPBのチームから声が掛かることはなかった。「やれることをやってダメならしょうがない」と、引退の意思を固めた。

＜続く＞

#2に続く

「野球しかなかったら、引退すると本当に何も残らない」《2016年ヤクルトドラ1》寺島成輝が“戦力外→4カ月のサラリーマン生活”で感じたリアル