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大迫勇也はヴィッセル神戸に何をもたらしたのか? 優勝決定試合でカメラマンが見た“半端ないエースの猛ゲキ”「弱気の虫を叩き潰すかのように…」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/11/28 17:01
11月25日、J1初優勝を果たしたヴィッセル神戸。1点差に迫られた直後、大迫勇也は自身の胸を強く叩いて佐々木大樹に檄を飛ばした
神戸は“優勝して然るべきチーム”だった
1点差となった後、試合は決して神戸ペースではなかったが、大迫はチームの先頭に立って戦う姿勢を貫き続けた。プレーが切れたタイミングでしばしば痛そうに腹部に手を当てていた佐々木も、プレー中はなおも「神戸らしい選手」であり続け、ハーフタイムに交代することもなく後半のピッチに立った。
とはいえ、さすがに普段のように試合終盤までフルスロットルで動き回るのは無理だった。後半5分、とうとう体が限界に達した佐々木は交代でピッチを後にした。痛みをこらえて戦い抜いた彼に対し、スタジアム中から惜しみない拍手が送られたのは言うまでもない。
ジェアン・パトリッキと交代した佐々木はピッチを振り返った。今季は32試合に出場して7ゴール。躍進を遂げたシーズンの優勝がかかった大一番で、不本意なかたちで交代せざるを得なかった悔しさは計り知れない。だが、彼はその感情を抑え込み一礼すると、去り際にチームを鼓舞してみせた。
大迫の振る舞いと、それに応えた佐々木。今季の神戸の試合では彼らのような関係性を、至るところで目にすることができた。選手間だけでなく、吉田孝行監督と選手たちの間にもそれがあるのは間違いない。
いまやヴィッセル神戸は、誰もがブレることなく勝利のために戦い続けるチームになった。背景には、大迫を発信源に伝播した強靭なメンタリティ、さらに信頼をベースとした互いへの要求レベルの高さがある。
その象徴となるようなシーンを、優勝がかかった大一番でも目の当たりにさせられた。なおも歓喜が続くピッチにカメラを向けながら、優勝して然るべきチームだ、と誰に言うでもなく胸の内でつぶやいた。