NumberPREMIER ExBACK NUMBER

「これじゃ打てねえわ、と思って…」巨人・坂本勇人34歳が明かす“復活の一球”とは? 腹を括って試した打席で「あ、この感じ、これいいな」

posted2023/11/14 17:00

 
「これじゃ打てねえわ、と思って…」巨人・坂本勇人34歳が明かす“復活の一球”とは? 腹を括って試した打席で「あ、この感じ、これいいな」<Number Web> photograph by Shunsuke Mizukami

サードも守った今季は打率.288、22本塁打、60打点で復活を果たした巨人・坂本勇人(34歳)

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph by

Shunsuke Mizukami

 昨季はケガに悩まされ83試合の出場に終わった。だが今季は序盤で苦悩を払拭し、印象的な本塁打や初挑戦のサード守備など復活を力強く印象付けた。“変化を恐れないリアリスト”坂本勇人がプロ17年目を振り返る。
 発売中のNumber1084号掲載の[復活のシーズン]坂本勇人「変化がこんなに楽しいとは」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

坂本勇人にとって“この一球”とは?

 復活を期す坂本勇人には今年、何かが降ってくる瞬間があったのだという。

「降ってくる……うん、ありましたね。打席の中でのこの1球で、『あ、この感じ、これ、いいな』と思った瞬間があって、それを続けていったら、やっぱりよかった、という1球がありました」

 それは、どの1球だったのか。

「ちゃんと把握はしていないんですが、僕が試合の中で、『これじゃ打てねえわ』と思ってノーステップにした打席がありました。6月の西武戦だったかな。左ピッチャーが相手でタイミングが取りづらかったのでノーステップにしたら、次の日の練習で(原辰徳)監督に『あのノーステップ、よかったじゃないか』と言われたんです。

 ちょうどその日、相手の先発がアンダースロー(與座海人)だったので、もう一度、ノーステップを試してみようと思って打ったら、ポーンとホームランが出た(6月15日、インコース低めのストレートをレフトスタンドへ運んだ第9号)。そのとき、やっぱり僕も変化していかなきゃダメなんだなと思いました。今まで何千打席と立ってきて、バッティングはこうすべきだというものが自分の中にあったんですが、そこに囚われるのはよくないと感じたんです」

坂本の左足が上がらない

 6月14日の東京ドーム。

 交流戦を戦うジャイアンツにあって、坂本はもがき苦しんでいた。今シーズンの開幕から22打席続けてヒットが出ないなど不振に喘ぎながらも、徐々に調子を取り戻しつつ、それでも波に乗り切れない時期。坂本の迷いは、この日の第1打席から見て取れた。マウンドにいたのはライオンズの先発、左のディートリック・エンス。トップバッターの坂本は、いつものように左足を上げて初球を待った。チェンジアップを見送って、ボール。2球目、3球目も同じように足を高く上げていた坂本に変化が生じたのは4球目だ。足の上がりが小さくなって、カットボールを左方向へ引っ張った。これがファウルとなって5球目――。

 坂本の左足が上がらない。

チェンジアップに空振りを喫するも…

 ここでエンスが投げた151kmのストレートをノーステップの坂本が仕留め損なって、ファウル。続く6球目も左足が上がらず、ストレートを見送ってボール。7球目はカットボールをファウル、8球目にインコースへ投げ込まれたストレートを見逃して、結局は三振。ノーステップにしても結果が出なかったからか、突如として降ってきた感覚に坂本はまだ自信を持てない。

【次ページ】 坂本は、ここで腹を括った

1 2 NEXT
坂本勇人
読売ジャイアンツ

プロ野球の前後の記事

ページトップ