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久保建英22歳「このような勝利に慣れないと」なぜ“ソシエダ20季ぶりCL決勝T”偉業にもクールだったか…“動画に収まらない”タケの真骨頂
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/11/12 17:05
ラ・レアル20シーズンぶりのCL決勝トーナメント進出。その偉業にも、なぜ久保建英はクールな表情だったのか
左右の両翼に張るゆえ、通常では交わらない2人が見せた、狭い空間での即興的なコンビネーション。ダビド・シルバという最良のパートナーがいなくなった今、なかなか見ることができなかったが、それこそが久保の真骨頂だ。この時すでに勝負は決していた。
一点に意識を集中させられ、そこから左右に揺さぶられたベンフィカ守備陣はそれぞれのマークを見失ってしまっていた。バレネチェアのクロスこそ跳ね返されてしまったが、こぼれ球をダイレクトで蹴り込むと、ゴール前フリーになったミケル・メリーノが反応してゴールへ押し込んだ。
ラ・レアルの勢いはとどまらなかった
さらに前半11分、浮き足だったベンフィカの後方へのパスがずれると、先陣に立つオヤルサバルがいち早く反応。ボールを奪い切るとゴールへ流し込み追加点を奪う。
続く15分、ブライス・メンデス、バレネチェアによる変則的なフリーキックをメリーノが押し込み、得点時に流れる〈Freed from desire〉がこの日3度目の爆音で響き、会場はお祭り状態に包まれた。
相手はCLの常連、昨季はベスト8へ進出している。欧州の成績だけで見れば、格上の相手だ。しかも自分たちが応援するクラブは前節バルサ戦、前々節ラージョ戦を終了間際の失点によって、勝ち点を失ってしまってもいる。大事な試合だが、苦戦を強いられたとしても仕方ないという雰囲気だった。だからこそ、目の前で繰り広げられる快進撃にスタジアムは歓声に包まれていた。
メリーノのゴールはVAR判定の結果、取り消されてしまったが、ソシエダの勢いは消えることはなかった。
21分、久保が右サイドでボールをキープしながら相手を引きつけ、メリーノを経由して逆サイドへボールを展開。左サイドには、バレネチェアが完全フリーでボールを待ち受ける。詰め寄る相手を切り返してかわすと、利き足で力強くファーサイドへシュートを打ち込みリードを広げた。
29分、サイドを抜け出したバレネチェアのクロスに反応したオヤルサバルがボックス内で倒されPKを獲得。ブライスが放ったシュートはポストに当たりゴールはならなかったが、ソシエダの優位は変わらなかった。
誰より全速力で帰陣する久保の姿も
その中で久保は、明らかに中央寄りのポジションを取る機会が増え、意識的にゴールを狙いに向かった。ゴールへの意欲がやや空回りに映る場面もあったが、もちろんそれだけではない。