代表活動でも明るいキャラクターは健在で、グループリーグ1位で突破に貢献した活躍もさることながら、メディア対応の良さも注目度を上げた要因だった。練習場にバスが到着すると、まずは槙野が記者団に「おはようございます！」とご挨拶。続いて柏木が「お、今日もみんないるね〜！」と続くのがお決まり。練習後や試合後も「今日は何を話しましょう！」と槙野が仕切ると柏木は「聞きたいことある〜？」と場を回していた。

　この2人のやり取りは当初は口数が少なかった森重真人（FC東京）やシャイな内田篤人、どこか遠慮がちだった年下の香川真司（セレッソ大阪）らにも少なからず影響を与え、ミックスゾーンではあちこちで笑い声が起こっていた。

　さらに、柏木と槙野が発起人となって人気漫画や当時話題のネタを取り入れたゴールパフォーマンスが話題を集めた。安田理大、太田宏介、森島康仁、梅崎司（大分トリニータ）ら全員で楽しむ姿は、FIFA主催の緊張感のある世界大会では極めて新鮮に映った。

　日本はもちろん、開催地のカナダでも愛され、拠点となったヴィクトリアという港町では「ヤングジャパン」で話題が持ちきりになった。柏木らは大会中に迎えたカナダの建国記念日には、日本代表のジャージ姿で祝賀イベントの会場に参上。現地の人々と風船の帽子やグッズを身に纏って一緒に喜び合っていた。

練習場に訪れた現地の子どもと一緒に遊ぶ（左から）安田、柏木、槙野　©︎YUTAKA/AFLO SPORT

「調子に乗っているだけとは思われたくない」

　そんな微笑ましい姿に加え、金髪の安田や髪を赤く染め上げた槙野らビジュアルが目立った集団は、いつしか「調子乗り世代」と名付けられた。今も代名詞になるフレーズだが、実は当時この呼ばれ方に怒りを覚えていた一人が柏木だった。

「調子に乗っているだけとは思われたくないよね。やるべきことをやっているからこそ、明るくできるし、それがチームとしてもプラスになっている。こう言われることははっきり言って心外だけど、それだけ注目されている、俺たちの明るい雰囲気が伝わっているということだから、これを大切にしながらちゃんと地に足を着けてもっと日本のために頑張るよ」

　このときも反骨心を力に変えた柏木は、ベスト16に進出に貢献。世界一には届かなかったが、確実に日本の未来を明るく照らした。大会後は「俺たち調子乗り世代だから」とすっかりフレーズを気に入っていたこともしっかり書き残しておきたい。

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