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「タックルは疲れる…」ラグビー日本代表は4年後、どんなチームを目指す? 大西将太郎「高校ジャパンやU20も代表ヘッドコーチが見るべき」
text by
大西将太郎Shotaro Oonishi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/28 11:05
2019年とは異なる戦い方で臨んだジェイミー・ジョセフHC(53歳)。2大会連続の8強入りは果たせなかったが、長きに渡る日本ラグビーへの貢献は大きい
もともと、ジェイミーは選手をあまり交代させないコーチだが、アルゼンチンは日本戦に向けて直前のチリ戦から先発を11人変更している。最終的にプール戦で出場しなかった選手もゼロで、かたやジャパンは5人もいた(垣永真之介、シオネ・ハラシリ、堀越康介、ベン・ガンター、小倉順平)。アルゼンチン以外のベスト8を見ても、多くの国で出場ゼロの選手は1人いるかいないか。優勝を見据えている国は、登録した33人をフルに入れ替えて戦い抜いている。
2019年大会もジャパンは5人の選手がプレーすることなく終えている(木津悠輔、北出卓也、徳永祥尭、茂野海人、アタアタ・モエアキオラ)。当時を振り返っても、目標に置いていたプール戦を突破して、準々決勝の南アフリカ戦で疲れが一気に出た。同じ課題を露呈した。
アンダー世代の強化は急務?
平均年齢をベスト8の国と比較しても南アフリカ、アイルランドに次いで3番目の28.7歳と高い。パンデミックで止まった1年間によって、ユース層の強化や新しい若手の発掘も後れをとったようにも思う。
次の4年後に向けてできることは何か。新たに就任するヘッドコーチによって目指すラグビーが変われば、メンバー編成も変わる。ただ、普遍的に変わらない部分として、日本代表の育成システムの根幹を再構築しなければならない。一貫した強化システムとプログラム。高校代表やU20の強化をバラバラにするのではなく、代表のヘッドコーチが見る。一日にしてできるものではないし、費用などのハードルもあるが、ここを避けては今回のW杯で得た教訓は生かされない。
U20世代は、今年7月のワールドチャンピオンシップで5戦全敗を喫して1つ下のカテゴリーへの降格が決まった。パンデミックの影響で学生たちの強化が思うように進まなかったことも要因だが、下のカテゴリーでの強化は後れを超えて「停滞」する。常に上位のカテゴリーで戦い続けることが大事だ。
そのためには、世界の舞台で戦う回数を増やす。例えば、欧州のシックス・ネーションズは、本大会とほぼ同時期にU20や女子の大会も並行して開催している。そういう機会をもっともっと作っていく。そこで体験した相手の強みや体のぶつけ合いが経験値となり、のちにW杯での勝利につながる。
サンウルブズなき今、代表に入る可能性のある選手を早くから強化していくことは最重要課題。目先だけでなく、全体像を見渡した強化プログラムが必要だ。
フランスは、代表ヘッドコーチのファビアン・ガルティエがU20を指導することがあった。アルゼンチンはユースの強化施設を持っている。そこのアカデミー出身者が世界のクラブと契約して活躍することで、それが代表の強化につながっている。
日本は今年6月に強化拠点として福岡に「JAPAN BASE」をオープンした。環境は整いつつある。あとは仕組みの部分。強豪国がどういう取り組みをしているのか、良い部分を抽出して日本のスタイルを作り上げることが急務だろう。