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「鼻が曲がっちゃったけど、まぁいっか」ラグビーW杯“死闘”を制した“南アの鉄人”が世界一になるために日本を選んだ理由…来日6年目「箸は完璧」 

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藤原志織

藤原志織Shiori Fujiwara

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/10/17 11:03

「鼻が曲がっちゃったけど、まぁいっか」ラグビーW杯“死闘”を制した“南アの鉄人”が世界一になるために日本を選んだ理由…来日6年目「箸は完璧」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

ラグビーW杯優勝候補フランスとの死闘を制した南アフリカ。日本でもお馴染みのクワッガ・スミスは、途中出場ながら“いつも通り”の存在感を発揮した

「試合中、なんでそこに行けんの? と驚いたことは何度もあります。グラウンドにいる30人中29人がしんどい時間帯も、一人だけめちゃくちゃ走って、前に出て、味方の14人を引っ張ってくれる。フィジカル的にも、メンタル的にも、そこにクワッガがいるだけで安心できます。

 もちろん、同じポジションを担うライバルとしては、追いつき追い越さなくてはいけない存在ですが、プレーヤーとしてのクワッガは、正直、参考になりません。おかしすぎて(笑)。世界中どこを探しても、あの身長と体重であんなプレーをする選手はいない。一般的ではなさすぎて、真似してみよう、とはならないんです」(庄司)

 挙げればきりがないほどのスーパープレーとハードワークでチームを助けているクワッガだが、最大の武器は、まさに獲物を狩り獲るような鋭いジャッカルにある。

 W杯フランス大会でも、それは健在だ。“磐田のヒーロー”クワッガは、世界ランク1位の相手と対峙しても、クワッガそのもの。仕事ぶりは相変わらず一貫していた。プール予選の南アフリカとアイルランドの一戦。後半途中から出場すると、自陣のブレイクダウンの攻防で生まれたほんのわずかな隙を見逃さず、すぐさまボールに絡み相手の反則を誘発。得意技でアイルランドの攻撃を止めてみせた。

 準々決勝のフランス戦でも、クワッガはその真骨頂をいつもと同じように発揮し、開催国を1点差で破っての4強進出に貢献している。

周囲が吹き出すほど“普通の手”

 以前、メディアのテレビ取材を受けた際、クワッガがあまりにジャッカルを連発しているので、実はものすごく手が大きいんじゃないか、という話になった。「そうかなぁ」と遠慮がちに差し出された手のひらは、本当に普通だった。その場にいた誰もが、思わず吹き出してしまうほどに。

 クワッガ自身は、ラグビープレーヤーとしての強みをこう分析している。

「自分はスピードが一番の武器だと思っています。それは、ジャッカルを狙いに行くときのスピード、立ち上がってプレーを再開するまでのスピードといった、動きの中での速さのことです。だから、決して体格は大きくないのですが、ただ体重を増やせばいいとは思っていません。いかにそのスピードを維持できるかが、自分にとってはとても大事なことなんです」

【次ページ】 「日本の四季を満喫」「麺は食べないけど箸は使う」

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