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馬淵史郎が猛ゲキ「ビビってんのか?」U18のMVP・緒方漣が明かす“バントで勝つ”世界一の内情…なぜ高校生は“馬淵語録”に惹かれるのか
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKichi Matsumoto
posted2023/10/13 11:03
世界一に輝いたU-18野球ワールドカップのMVP・緒方漣が語る「馬淵史郎の実像」
緒方 正直、ちょっと嫌でした。前田(悠伍)じゃないの? って。決勝で、あれだけのピッチングをしてくれたので。ただ、MVPの対象になるのはオープニングラウンドとスーパーラウンドまでで、決勝は関係ないみたいなんですよ。なので、東恩納(蒼=沖縄尚学)は「いや、おめえだろ」みたいに言ってくれましたけど。
前田悠伍にマウンドで…「U-18決勝ウラ話」
――決勝も含めて、ここぞというところは全部、前田投手が先発して、期待通り、試合をつくってくれました。代表メンバーというと、どうしても甲子園出場組が中心になりますけど、結果的に、地方大会の決勝で負けて甲子園に出られず悔しい思いをした緒方君と前田投手がチームの柱になっていましたね。
緒方 決勝の2回か3回かな、1点リードされてるとき、マウンドに行って、前田に言ったんですよ。「俺らは(地方大会の)決勝で負けてるんだから、この試合は絶対勝とうな」って。前田はもうモードに入ってたので「(守備は)頼むぞ」ぐらいしか返してこなかったですけど、通じるところはあったと思います。
――開催国が台湾だったので、決勝はすごい雰囲気だったらしいですね。
緒方 台湾の応援はリーダーみたいな人がマイクを使ってでかい声を出すんです。だから、その声がずっと頭の中にキンキン響いているような感覚で。そのスタイルが過激で、けっこう吞まれてしまった部分がありましたね。
丸田湊斗に「バス、隣の席に座ろうよ」
――慶応の応援に比べたら、たいしたことなかったのでは?
緒方 いや、でも、球場一周、ぐるっと全方向から応援が聞こえてくるので、完全にアウェー状態でした。全員敵だな、という。あれは本当にすごかったですよ。ただ、スーパーラウンドの3戦目で台湾と対戦して、そこで一度、経験していたので。決勝のときは、もっとすごかったですけど、苦にはならなかったですね。だいたい感じはわかっていたので。
――代表メンバーには神奈川大会で苦汁をなめさせられた慶応の丸田湊斗選手もいました。
緒方 慶応と仙台育英のメンバーは決勝まで勝ち上がっていたので、代表への合流が早稲田大との練習試合の日だったんです。その日、室内練習場で1人ずつ自己紹介をして、そのあとすぐに「おめでとう」と声をかけました。それで「バス、隣の席に座ろうよ」となって。いろいろ話をしました。
――目立ち過ぎじゃない? くらいのことは言ったのですか。
緒方 いや、僕も丸田はいちばん警戒していたバッターなので、これくらい活躍して当然だと思っていました。
〈つづく〉