緒方　言われましたね。早稲田大学との練習試合で、ノーアウト一塁から送りバントのサインが出たんですけど、カーブがきて空振りしてしまって。結局、フォアボールを選んで出塁できたんですけど、ベンチに戻ったときに馬淵監督に「おい、緒方。そんなんやってたら使いもんにならんぞ」って。合流して、まだ3日しか経ってないのに、こんなにズバッと言われるんだ、と。補欠っていう考えは自分の中ではなかったので、そこからはバッティング練習のときも最初は絶対バントをしようとか、神経を張ってバント練習するようになりました。あそこから他の選手もバントの重要性をより強く意識できたと思います。

――今どき珍しいというか、とにかく「おれの言う通りにやれ。そうしたら勝たせてやる」という親分肌の監督ですもんね。

緒方　ミーティングとかでも馬淵監督が「男だったら、死に物狂いで戦ってこい」みたいな奮い立たせるようなことを言ってくれるので、そこで一気に引き締まるんですよ。台湾との決勝の前日も「明日だけ勝てば、明後日も、その後もずっと負けていい。100回やって99回負けてもいいけど、明日だけは何が何でも勝て」って。あの言葉はすごく印象に残っていますね。

「あの言葉はすごく印象に残っています」 ©Kei Nakamura

「選手を好き嫌いで見るようなことがない」

――どんな相手だろうと、決して怯むような監督ではない。

緒方　スーパーラウンドの3戦目、台湾に負けたときも、先発の高橋（煌稀＝仙台育英）が初回に1点を先制してもらったあと、裏に3点くらいとられたんですよ。フォアボールを2つ出して。そうしたら「ビビってんのか？」みたいなことを言われていましたね。ただ、そうやって怒られても選手が離れようと思うわけではない。むしろ、ついていこうと感じさせてくれる監督でしたね。

――ムッとしなかった？

緒方　それはまったくなかったです。勝つために言ってくれているのは、すごく伝わってきたので。選手を好き嫌いで見るようなことがないのも、すごくわかりましたし。

――最終的に緒方君は打率.542の大活躍で、大会MVPに選ばれました。

【次ページ】　前田悠伍にマウンドで…「U-18決勝ウラ話」