八村によると、この夢のような夏のプロジェクトが実現したのは、レイカーズのアシスタントコーチ、フィル・ハンディの仲介によるものだという。ハンディはレブロンがレイカーズ移籍前、クリーブランド・キャバリアーズに所属していたときに同チームのアシスタントコーチだったこともあり、レブロンとの繋がりは強い。そして、八村のことは今年1月にレイカーズに加入した当初から「自分にルイの担当させてほしい」と志願し、八村の個人ワークアウトや試合に向けての準備などをサポートしてきた。レブロンにとっても、八村にとっても、信頼できるコーチなのだ。

「昨シーズンが終わった後、フィルが『この夏はできる限りレブロンといっしょに練習するべきだ』と言ってくれたんです」と八村は語った。レブロンの同意を得た八村は、レブロンの夏のスケジュールに合わせて、ロサンゼルスにいるときには早朝から練習場に行き、レブロンが別の土地に行く用事があったときにも何度かついて行き、いっしょに練習した。

「とにかく彼について回りました。すばらしい経験でした」と八村。「コート上だけでなく、身体のケアの仕方や、ウェイトルームなど、色々なことを学びました。こういった機会をくれたフィルやレブロンにはとても感謝しています」

フィル・ハンディ（右）の助言で、レブロンとの特訓が実現した（写真は2023年1月）©︎USA TODAY Sports/REUTERS/AFLO

「僕らは同じような身体のタイプだ」

　そんな最高の環境で、八村はいったいどんな練習をしていたのだろうか。

「彼とは、ミッドポストのエリアからの攻撃をたくさん練習しました。もちろん、シューティングもたくさんやりましたし、ボールハンドリングもやりました。全部やるというのがこの夏の一番の目標でしたから。レブロンのやることを間近で見て、彼からちょっとしたコツやフットワークなど色々と教えてもらいました。身体をどう使うかも教わりました。レブロンからは、僕らは同じような身体のタイプだと言われて──これは、彼が言ったことなんです──こういう身体のタイプなのだから、自分がやりやすい場所に行けばいいと言われました」

プレシーズンマッチでの八村塁　©︎Getty Images

　この言葉の端々からは、レブロンから「自分と同じような身体のタイプ」と言われたことに対しての驚きや喜びがあふれ出ていた。実際に比べると、レブロンは身長206cmで体重113kg、八村は203cmで104kgと、八村のほうが一回り小さい。それでも、確かに八村は身体のサイズ以上に力が強く、NBAでもあまり力負けしない。そういったところに、レブロンは自分との共通点を見出したのだろうか。

【次ページ】　八村が少しムッとした記者の質問