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「物価高…カレー弁当1900円、ビール1杯1300円、電車は20分遅れ」ラグビーW杯、フランス現地記者ここまでの本音「4年前、日本は良かったなあ」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/13 11:05
アイルランドの女性ファン(ボルドーの会場で)
アサヒスーパードライでいい気分のアイリッシュ
4年前、静岡で行われた日本対アイルランド戦の時には、アイルランドのサポーターが掛川駅近くのコンビニエンスストアにあったビールをすべて空にしていたが、ボルドーでは「辛口」を大量に胃袋に落下させていた(※スタンドではアサヒスーパードライが8ユーロ[約1300円]で売られている)。
試合終了後、ボルドーのターミナル駅に向けての直接の公共交通手段は、30分ほどかかるトラムの一択しかない。しかし、トラムはたまにしか来ない。
増発ナシ。
アイルランド・サポーターは既に出来上がっていて、「高歌放吟」状態である。トラムを待っている間も歌うし、押すし、カオスの深刻度は高まっていった。
20分ほど経っても動く気配がないので、写真部員Mくんと私は、近くのホテルまで歩き、Uberを呼ぶことにした。すると、待ち時間わずか1分でモロッコ出身のユセフが、プリウスに乗って、やって来てくれた。ありがたや。
40分ほどの道中、ユセフとはフレンチポップの話や、去年のサッカーワールドカップの話をした。ノックアウトステージで母国がスペイン、ポルトガルを破ったことはユセフの誇りでもあった。
スタジアム周りのカオスから、ユセフのスムースなドライビングテクニックによって救われた。
「日本大会は素晴らしかったのだ」
ボルドー駅に到着すると、トゥールーズ行きの最終電車は20分遅れとなっていた。久しぶりに、自分の頭の中から「定刻」という言葉を削除する作業に取り掛からなければ、と思った。
駅前のカフェで(世界一働くホール係が複数人いて、これは見ものである。ただし、必ずしもカスタマー・ファーストではない)、Mくんとビールを飲みながら、イングランド対アルゼンチン戦を見て過ごす。トム・カリーのレッドカードを見て、心がざわめいたが、なんだか遠いところの話のような気がした。
長い一日だった。
翌日のトゥールーズでの日本対チリ戦。
メディアセンターに行くと、水とマドレーヌ、そしてわずかにグレードアップしてフルーツが用意されていた。
いま、私はハッキリと宣言する。
2019年のラグビーワールドカップ日本大会の運営は、素晴らしかったと。極上吉だったのだ。
台風の影響で中止になった試合はあったものの、万全の輸送体制、温かい食事、時刻通りの進行によって、ノーストレスで仕事を進めることができた。
最大の問題は…
どうやら、マルセイユでのイングランド対アルゼンチン戦では案内不足が原因で、キックオフの時間に間に合わなかった観客が多数出てしまったとワールドラグビーからリリースがあった(ボルドーでもそうだったらしい)。