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井上尚弥の“次の標的”タパレスを直撃…圧倒的不利との予想も、なぜそんなに自信がある? 独占取材で感じた“ちょっと不気味”なところ
posted2023/09/11 11:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Daisuke Sugiura
井上尚弥(大橋)の次の標的はどんな選手なのかーー。7月、スティーブン・フルトン(アメリカ)に勝ってWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者となった“モンスター”は、年内に予定されている次戦でWBAスーパー、IBF同級王者のマーロン・タパレス(フィリピン)と4団体統一戦を行うことが有力視されている。
31歳のベテラン、タパレスは37勝(19KO)3敗。バンタム、スーパーバンタム級の2階級を制しており、パワー、技術、スピードを満遍なく備えた実力者ではある。試合ごとのアップ&ダウンこそあれ、4冠戦が成立すればやはり井上が圧倒的優位と目されることは確実だが、“ナイトメア(悪夢)”のニックネームを持つサウスポーは侮れない存在と言えるのだろう。
タパレスは8月下旬に渡米し、ロサンゼルスからラスベガスと移動してトレーニングを継続している。現地8月24日、ベガスでの合宿を開始する前のタパレスとハリウッドのワイルドカードジムで会い、じっくりと話を聴いた。フィリピン史上初の4団体統一王者を目指すサウスポーは、井上へのリスペクトを語りつつも、“モンスター”にも悪夢を見せるという意気込みを隠そうとはしなかった。
井上尚弥=「Complete Package」
――井上選手とのスーパーバンタム級4冠戦が具体化していると伝えられていますが、今の率直な気持ちは?
マーロン・タパレス(以下、MT) エキサイトしていますよ。私にとって重要な機会です。4団体統一王者になることこそが、すべてのボクサーにとって究極の目標。こういった試合ができるのをずっと待ち望んでいたし、リング上ですべてを出し尽くすための準備はできています。
――フルトン対井上戦をリングサイドで観戦されていましたが、あの試合があれほど一方的な内容になったことには少々驚きましたか?
MT いえ、そんなことはないです。もともと井上が優位と思っていましたし、1ラウンドを見て、「これは井上の勝ちだ」と思いました。体格で上回るフルトンが相手でも、開始ゴング直後から自分のボクシングができていたのは井上の方でしたから。
――井上選手の試合はどのくらい見ているのでしょう?
MT 2、3試合の映像をじっくり見ています。井上はすごい選手ですね。技術的に優れたボクサーですし、もちろんパワーもあります。ムーブメントが素晴らしく、頭のいい選手でもあります。基本的にすべてを備えており、“Complete Package(完全装備)”という形容がしっくり来ます。