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ついに壊れたホンダエンジン「経験したことのないトラブル」でレースを失った角田裕毅が泰然自若としている理由
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2023/09/06 11:02
イタリアGPは予選11番グリッドで上位進出も望めた角田だが、スタートを切れないリタイアにも冷静に対処した
レーシングマシンという機械で争うモータースポーツに、マシントラブルはつきものだ。それでも折原GMがドライバーに対して謝罪したのは、トラブルも含めた成績がそのドライバーの評価につながるからではないだろうか。
しかも、今シーズン限りでアルファタウリとの契約が切れ、いまだ来シーズンの去就が発表されていない角田にとって、この時期のレースは一戦一戦がすべて大事となる。
だが、いまの角田の頭の中に、来年のシートのことはない。
「あんまり、考えていない。来シーズンのことについては心配しないようにしているし、する必要もないと思っています」
角田がそう考えるのは、1年前の経験があったからだ。F1ドライバーとして2年目のシーズンとなった2022年のシーズン中盤、角田は「契約のことが頭にあって」、肝心なところで焦ってミスを犯し、レースをフイにしたことがある。
「落とされる理由がない」
そこで今年は、コース上のパフォーマンスだけに集中するためマネージャーを雇った。
重責を担うことになったマリオ宮川は、かつてジャン・アレジや小林可夢偉のマネージメントを務めたベテラン。契約交渉が大詰めを迎えるこの時期は、パドックでいつも緊張感を漂わせがちだ。その宮川の表情が、今年は意外なまでに穏やかだ。
「とても、リラックスしています。(アルファタウリのドライバー選定に影響力を持つ)レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)やクリスチャン・ホーナー代表とも話し合っています。ホンダさんからも非常に温かいサポートをいただいています。いま、詳細を詰めているところです。もう少し、お待ちください」
宮川に全幅の信頼を寄せている角田の気持ちは、スタートできずに終わったイタリアGP後も変わりない。「残留する自信があるのか?」という問いに、角田はこう答えた。
「はい、落とされる理由がないんで。鈴鹿でいいニュースを出せればいいなと思っています」
もし、角田が24年もアルファタウリに残留することになれば、デビュー以来4年連続で同じチームから参戦する、初めての日本人F1ドライバーとなる。