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「死んじゃうんだな」部活中の大ケガ…佐藤弘道55歳が“ドクターストップ”を宣告された高校時代「おかあさんといっしょにも役立ちました」
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph byShiro Miyake
posted2023/08/25 11:02
元・体操のお兄さんとして現在も体操指導などの活動を続ける佐藤弘道さん。「おかあさんといっしょ」初出演から、今年で30周年
「もう1回落ちたら死ぬぞ」宣告されたドクターストップ
――日体大に進んでからも体操を続けたのですか?
弘道さん 体操部には入ったんですが、体操競技ではなく、マスゲームなど演技発表会を行う部活です。器械体操のほうは、「もう1回落ちたら死ぬぞ」って、ドクターストップがかかってしまって。僕としても、あそこでケガしているようじゃ自分の競技人生はたかが知れているって痛感していたから未練はありませんでした。
大学では部活に入らないでバイトでもしようかと思っていたんですが、子どもの頃からずっとスポーツをやってきたから、体を動かしていないとストレスがたまっちゃって。それで、体操部に入っていた同級生に誘われて、入部しました。
――体操競技は個人種目ですが、体操部は集団での演技ですよね?
弘道さん そうなんです。それまでやっていた柔道も水泳も個人種目だし、テニスはダブルスがあるとはいえ、最大でも2人。いわば自分のためだけに頑張って来たわけで、集団でやる体操とは勝手が違った。だから「みんなのために頑張る」という感覚が、最初はつかめなくて。
体操競技に比べれば肉体的にはかなり余裕がありましたが、精神的につらかった時期はあります。1年生のうちから技術はあったので、上級生に「佐藤は俺たちと一緒に練習しろ」と言われていて、同級生には「なんであいつばっかり」と思われていたんじゃないかな。上級生がいるうちは良かったけれど、学年が上がるにつれて、どんどん孤独になって居心地が悪くなっちゃって。
そのうち大学に行くのもイヤになって授業に出ていなかった時期もありました。ただ、そういった人間関係や集団の中での振る舞い方、「なぜみんなのために頑張るのか」を考えるといったことが、その後「おかあさんといっしょ」で、チームプレーをする上で役に立ったと思うんですよ。だから、振り返ってみれば、大学時代の経験は人生の大きな財産になったと思っています。
《壮絶な学生時代から「おかあさんといっしょ」での“体操のお兄さん時代”を経て、番組卒業後は子どもたちの指導者としても活動中の佐藤さん。インタビュー第3回では、体操のお兄さんの知られざるセカンドキャリアについて聞いた。つづく》