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「カーリング女子は可愛く見守る対象」の偏見も…藤澤五月“バキバキの筋肉美”はなぜ衝撃的だった? 報道に感じる“スポーツとイメージ”の問題 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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posted2023/08/01 11:02

「カーリング女子は可愛く見守る対象」の偏見も…藤澤五月“バキバキの筋肉美”はなぜ衝撃的だった? 報道に感じる“スポーツとイメージ”の問題<Number Web> photograph by Getty Images

「MOLA CUP」にて圧巻の肉体を披露し話題を集めた藤澤五月

・藤澤五月「白くなってる!」カーリング会場に舞い戻り 筋肉ムキムキから通常モードに(デイリースポーツ7月28日)

・ロコ・ソラーレ藤澤五月「お騒がせしています」 肉体美封印しカーリングモードへ(道新スポーツ7月28日)

・藤澤五月「家にテレビがないので盛り上がっていたのは分からなかった」ボディーメイクコンテスト反響に驚き(スポーツ報知7月29日)

 藤澤選手のことは多くの人が知っているから「別人のように変身」「以前の写真と比較」がネット記事と非常に相性がよかったのだろう。

藤澤の激変は、なぜ“衝撃的”だったのか?

 さて、今回私が感じたのは藤澤選手へのスポーツ紙の“驚き”について。以前、当コラムで2018年の「平昌五輪とスポーツ新聞」について書いたとき、私は「オヤジジャーナル」(おじさんがおじさんへ発信するメディア)がカーリング女子の登場に沸き立っていたことに注目した。こちらは当時の見出しである。

『日本で注目「雰囲気ほんわか」もぐもぐタイム』(日刊スポーツ2018年2月20日)

『カー女 もぐもぐ注文10倍 美味し「そだねー」と注目!!』(同2月21日)

「もぐもぐタイム」に「そだねー」。すーっとすべりながらストーンを投げるように、おじさんもすーっとカーリング女子に近づいていた。遂に銅メダルを獲得した際には紙面で「そだね~」の乱れうち。「そだね~」はもうおじさんのものと思えたのである。

 さらに言えばオヤジジャーナルから見てカーリング女子チームは「もぐもぐ」とか「そだねー」を経て、“可愛く見守る対象”として勝手に配置されていた感じも受けた。選手たちからすれば「そだねー」は単なる地元の言葉だが、おじさんにとっては「訛り=素朴」という勝手なロマンを抱いているように見えたのだ。それがカーリング女子報道に漂うフワフワとしたムードでもあったと思う。

 しかし!

 今回、藤澤選手は「バキバキ」となり、おじさんたちが抱いていた「フワフワ」は吹き飛んだ。このオヤジジャーナルの想定外、衝撃こそが藤澤報道の根底にあるように思える。勝手なイメージがあったからいつまでも「ギャップ」に驚くのでは?

【次ページ】 井上尚弥に大谷翔平…スポーツ界は“衝撃”だらけ?

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