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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園だけだと見逃してしまう…! 取材記者が明かす、地方大会で敗れてもなお注目の「高校生ドラフト候補」5人<投手編>
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2023/07/31 11:01
筆者注目の選手のひとり、篠崎国忠投手は192cmの大型右腕。所属する修徳高は東東京大会準々決勝で岩倉高に1-8で敗れた
それにしても、バッターたちのあの崩れ方はなんだ。根岸投手のテイクバック、腕を振り始める前にちょっと引っ掛かる感じになる。この一瞬の微妙なタイムラグが、打者の感覚を崩している。
「最速150キロ!」
大きな見出しになるのはスピードばかりだが、速いボールを投げるだけが、投手の「能力」じゃない。投手の仕事は、打者のタイミングを外すこと。根岸投手の快投は、そのことをあらためて思い出させてくれた。
【5】京都国際高(京都)・杉原望来投手「飄々とした鋼のメンタル」
京都国際高・杉原望来(3年・176cm72kg・左投左打)は、この夏の予選で見ることができなかったから、どうしても甲子園のマウンドで見たかったサウスポーだ。
昨年の左腕エース・森下瑠大(現・横浜DeNA)は、なんだか縁があるようで、その快投を4回も5回も見る機会があったが、杉原投手のピッチングは昨秋の京都府大会、龍谷大平安戦の一度だけだった。
森下二世のような見られ方をしていた杉原望来。確かに背格好やマウンド上の雰囲気は似ていたが、いざボールを持ってからは、タイプは違った。
森下は打者にキバをむいて投げ込んでいく左腕だったが、1年後輩の杉原望来は淡々と、飄々と、いつもフラットに投げていた。速球は135キロ程度か。スライダー、カットボールに、チェンジアップがいい揺れ方をした。
センバツに出場することになる龍谷大平安を4点に抑えて完投するぐらいだから「隠し持ったキバ」はあるはず。だが、それが表に出ない。相手としては、強豪であればあるほど、なかなか「本気」になりにくい。打てそうで打てないサウスポーに見えた。
冬と春が過ぎて、力感も増してきたと聞いていた。右腕エース・松岡凛太朗との腕の競い合いで、きっとグレードアップしたのだろう。
この夏、京都外大西を1点に抑えて完投した試合では、速球も140キロに達して、知らせてくれた人の話では、これまでのベストピッチだという。「これなら甲子園で出会えるな」と楽しみにしていたら、次の立命館高戦で敗れてしまうのだから、高校野球はわからない。
1年の夏も、2年の夏も甲子園に出場した京都国際で、いずれもベンチ入りしていたのに一度もマウンドに上がれなかった杉原。「今年こそは!」と意気込んだ「この夏」も、甲子園はギリギリのところでスルリとその手からこぼれ落ちた。
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次回は、「野手編」。甲子園では見られない、隠れた逸材バットマンたちに視線を向けたいと思う。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。