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人気レスラー・上谷沙弥が左ヒジを脱臼して号泣…スターダム“真夏の女王決定戦”で何が起きたのか?「レフェリーは即座に試合を止めた」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/07/25 17:03
7月23日、上谷沙弥はスターダム『5★STAR GP』開幕戦で中野たむと対戦。約5メートルの高さからプランチャを放ち、左ヒジを負傷した
中野たむのメッセージ「上谷、待ってるからね」
中野は消化不良の勝利を手にしたが、もやもやした気持ちに追い打ちをかけるように、次の衝撃が続いた。
暗転した場内が明るくなると、そこに姿を見せたのは映画の世界から抜け出してきたような“巨人”だった。どこかエジプト風の出で立ちだ。180センチは超えているであろう巨体が、リングの中央に立っている。そして、まるでマネジャーのようにアメリカ帰りの林下詩美がついている。
謎の巨人女戦士は中野を一方的に襲うと、担ぎ上げて投げ捨てた。中野は動揺していた。
「私はメーガン・ベイン。強くてパワフルな女神。赤いベルトに挑戦したい」
中野は口を開けて呆然としていた。誰だかわからない相手に、唐突に赤いベルトへの挑戦を口にされたからだ。「アイツ、誰?」と戸惑いながら、それでも中野は挑戦を受諾した。
「今年は壮絶な夏になるぞ。みなさん、このスターダムのリングで繰り広げられる、壮絶なみんなの生きざまを最後まで見届けてください」
試合後、中野は負傷した上谷のことを語り始めた。
「上谷、またやるんでしょう。待ってるからね。上谷は『いつも自分のターニングポイントにたむさんがいる』とか言っているけれど、私の節目節目にも必ずあなたがいる。いつも磁石みたいに引き合ってきたと思ってる。今日の結果は、私にとっても悔しい。だから絶対またやろう。このベルト、狙ってるんでしょう?」
突如現れたメーガン・ベインには、やはり衝撃を受けたようだ。
「なんかちょっとわけわかんないんですけど、正体不明の巨人に襲われて、あまりにもパワーがすごくて、今年初めての花火を見ました。すごいパワーだった。ちょっとあんまり覚えてないんですけど、でもあんなパワーでぶん投げられて、中野たむの情念にちょっとブーストかかっちゃいましたよ。必ずこの赤いベルト守り抜いて、赤いベルトのチャンピオンのままリーグ戦も制して、初優勝を必ず叶えます。去年みたいな惨めな思いは絶対したくない。ナンバーワンに、なります」