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大谷翔平18歳がいた花巻東は“なぜ負けた?” 岩手のライバル校監督が明かす“仮想大谷の7日間”…選手の声「やってきたことは間違いじゃなかった」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2023/06/27 11:03
花巻東時代の大谷翔平
「最初はバットにかすらなかったのが、2、3日すると当たるようになって、5日目にはヒット性の当たりが出るようになりまして。『慣れるもんだな』って。うちにとってあの1週間は、本当に大きかったですね」
関口がチームに課したのはスピード対策だけではなかった。高校時代の大谷はまだコントロールが安定せず、ストライクゾーンに来るコースの多くがベルトより高めだった。「三振は10でも20でもしていいから、低めだけはストライクでも手を出すな」。試合ではそこだけを徹底させた。
こうして大谷を攻略した
監督のシンプルな指示によって選手も開き直れたという。強力打線の中心でもある4番の二橋大地は、第1打席は凡打でも「あ、いけるな」と確信した。
「ベンチでもみんな、『打てんじゃね』とか話していました。『やってきたことは間違いじゃなかった』って。だから、2打席目は迷いなくフルスイングできました」
二橋は1点リードの3回、胸元付近に来た148kmのストレートをレフトポール際にアーチを放った。この一打は「ファウルじゃないか?」と、今も疑問視されているが、関口と二橋は「あれはホームランです」と真剣に頷く。大谷から15三振しながらも、9安打5得点を叩き出した盛岡大附の完全な作戦勝ちだった。
しかし、悲願の「打倒大谷」を成し遂げながら甲子園では、初戦で敗れた。原因について関口は、「『大谷を打ったんだからどこが相手でも勝てるだろう』って過信が出たのかもしれません」と悔い、猛省した。