酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平「憧れは捨てましょう」発言ベースに“データ活用の100%強振”「村上宗隆選手らの表情は…」侍分析担当が驚いた“WBC舞台裏”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/06/22 11:03
打撃練習中にタブレットを確認する大谷翔平。そのデータ活用をする姿勢に、ほかの選手も学んだことは多そうだ
大谷選手は1球1球バットを振り切っている。その前に中日ドラゴンズの選手と侍ジャパンの他の選手が打撃練習をしました。テストも兼ねて中日の選手も、侍ジャパンの他の選手も全部数字を取っていました。大谷選手はヌートバー選手とともに最後にケージに入ったんですが、その中で、大谷選手は誰よりもバットを思い切り振り切っていた。
もちろん侍の主力打者も振ってはいるんですが、スイングスピードや飛距離云々の話ではなく、自分の100%の力で思い切り振っている。他の選手より明らかに振り切っていると感じました。
やはり普段の積み重ねだと思います。振り切るような打撃練習をやらないと強くならない。バッターの基本ですよね。テレビなどで見ているときは気が付かなかったけど、目の前で大谷選手の打撃を見て、本当にフルスイングしていると思った。大谷選手のプレーに注目している中学生や高校生も、もっとフルスイングを意識してほしいなと思いました〉
大谷翔平が村上宗隆に突き付けた「壁」
大谷の打撃を目の当たりにした日本の強打者たちは、あまりの凄さに自信を喪失したと言われているが、実際はどうだったのだろうか。
〈中日の選手も横で見ていて“すげー”みたいに言っていたけど、一緒に戦うチームメイトは、ちょっと声をかけられない感じでした。僕は村上宗隆選手の表情を気にして見ていたんですが、後ろで見ていた村上選手は凄いショックを受けていたように感じました。山田哲人選手の表情からも笑顔は見られなかったです。
しばらくして村上選手が「(大谷選手の打球速度は)何キロですか?」と聞いてきた。彼は宮崎キャンプで計測した自分の数値を知っているのでその数字の差にもショックを受けたのだと思います。
でも、そのときに僕は村上選手は本気でメジャーでトップの選手を目指しているのだろうと思いました。確かにショックを受けてはいたけど、打撃ケージの裏とベンチ裏で僕と話したときのあの表情は“決意を新たにした”顔だと思いました。最年少で三冠王を取った上での新たな決意で、とてもショックを受けたと思いますが同時にすごく大きな経験になったと思います。村上選手は今少し調子を落としているようですが、いずれ絶対に結果を出してくるでしょう〉
28歳であんなにすごいことをする人がいる。47歳の僕は…
村上は昨シーズン終盤から調子を落としていた。それに加えて“大谷ショック”もあってWBCでも苦しみ、開幕してからもしばらく不振が続いた。しかしそれは、村上が「高い理想」を抱いたからなのだろう。