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W杯ドイツ戦衝撃決勝ゴール、浅野拓磨のその後…ブンデス最終戦で“残留決定”の立役者に、地元ファンは「スピリットがすごい」、本人「危機感持ってやってます」
posted2023/05/30 11:03
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
dpa/JIJI PRESS
この男は本当に《何か》を持っているようだ。
日本代表FW浅野拓磨がまた大仕事をやってのけた。5月27日、リーグ最終節で浅野が所属するボーフムはレバークーゼンを相手に3-0で勝利したのだが、この試合で1ゴール1アシストと大暴れし、クラブを土壇場でのブンデスリーガ1部残留へ導く活躍を見せたのだ。
戦力不足、監督解任、降格候補…も、奇跡の1部残留
相手は順位が確定して消化試合となったチームではない。ヨーロッパリーグ出場権を確保するために勝利が必須だった強豪だ。試合開始早々に不用意な報復行為でレバークーゼンFWアミン・アドリが退場処分になったという背景はあったとはいえ、浅野が魅せた見事なプレーの数々にファンは酔いしれた。試合後はファンも選手もスタッフも交えてのお祭り騒ぎとなった。
1部残留というのはボーフムの人からしたら当たり前のことではないどころか、大快挙なのだ。一昨季、2部からブンデスリーガに昇格を果たしたわけだが、これが実に12シーズンぶりの復帰。経営規模的にも、戦力的にも18クラブ中最下層に位置する。識者のほとんどが《降格候補》に名前を挙げていたが、知り合いのボーフムファンも「そんなことはわかっている」という心持ちで受け止めていたと話してくれたことがある。
昨季は13位でフィニッシュと耐え抜いたが、今季は開幕から6連敗を喫するなど苦しみに苦しんだ。昇格の立役者だったトーマス・ライス監督(現シャルケ監督)は6節終了時で解任に。流石に「今季の残留は無理かもしれない」と思ったファンも少なくなかったかもしれない。
ゴール、アシストが少ない浅野が称賛される理由
それでも新監督トーマス・レッチのもと、粘り強く勝ち点を少しずつ積み重ね、33節ヘルタ戦でも敗色濃厚なアディショナルタイムにCKから途中出場のケビン・シュロッターベックが値千金のヘディングシュートで同点に追いつくなど、最後まであきらめないその姿勢がチームの大事なよりどころになっていた。