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札幌か、北広島か? 200万都市vs.人口6万人の街…ファイターズ新球場建設をめぐる”運命の1日” 「前沢さん…真駒内でいいですよね?」 

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/05/25 17:00

札幌か、北広島か? 200万都市vs.人口6万人の街…ファイターズ新球場建設をめぐる”運命の1日” 「前沢さん…真駒内でいいですよね?」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

2023年から日本ハムファイターズの本拠地となった「エスコンフィールドHOKKAIDO」

 署名集めも地区ごとの説明会もプロジェクト全体から見れば小さな歩みなのかもしれない。野球で言えば、2番バッターの送りバントや進塁打のような仕事なのかもしれない。だが、そうやってつなぎ役として誘致に関わり市民と向き合ううちに、柴自身がこのプロジェクトに可能性を見出すようになっていた。 

2通りのレポート用紙

 企画財政部の自分のデスクに着いたのは午前7時半だった。ほどなくして川村が現れ、他の課員たちもいつもより早くやってきた。柴は庁舎全体に漂っている特別な空気を感じ取っていた。課員がそろうと川村は7つ並んだ会議室のうち、最も陽当たりの良い部屋に全員を集め、レポート用紙を配った。この日、それぞれがどう行動するか、そのスケジュールと役割が記されていた。そして、レポート用紙は2種類あった。北広島が建設地に選ばれた場合と、選ばれなかった場合である。

 庁舎に来るまで、柴は内心で淡い期待を抱いていた。 あるいは川村だけにはもう結論が伝えられているのではないか? それは北広島にとって朗報なのではないか? だが、2通りのレポート用紙と川村の硬い表情を見て、まだ何も決まっていないことを悟った。柴は会議室の壁にかかっている時計を見た。東京で、日本ハムの取締役会が始まる頃だった。札幌か、北広島か。命運が決まろうとしていた。

<後編に続く>

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#6に続く
今明かされるファイターズ新球場決定の”運命の日” 日本ハム取締役会は揺れた!「札幌と北広島、劣っている部分はどこか?」敵なのか、味方なのか…

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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