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あの森がファイターズの新球場に? ”ミラクル開成”奇跡の男が明かした衝撃の極秘計画と翌朝メール「昨日の話ですが…胸にとどめておいてください」
 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/05/11 06:04

あの森がファイターズの新球場に? ”ミラクル開成”奇跡の男が明かした衝撃の極秘計画と翌朝メール「昨日の話ですが…胸にとどめておいてください」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

2023年から日本ハムファイターズの本拠地となった「エスコンフィールドHOKKAIDO」。人口6万人の北広島市になぜ新スタジアムが建設されたのか

 そして、長らく棚上げされてきた総合運動公園開発事業が動き始めた2015年、市役所の企画財政部から出向の要請が届いた。それはつまり川村から杉原へのオファーであった。教育長から意思を確認されると、杉原は迷わず「いかせていただきます」と答えた。ようやく川村とともに仕事をする時がきた。以来、杉原の日々は充足していた。 

 この街に高校野球の全道大会が見られるような硬式野球場をつくるーー川村の夢は、杉原のそれとも重なっていた。ようやく自分が望んでいた仕事に巡り合えた感覚があった。

 ところが今、その夢が思わぬ広がりを見せようとしていた。本来なら血を滾らせるべきなのかもしれない。空から降ってきたようなチャンスを歓迎すべきなのかもしれない。だが、あまりにそれが唐突で巨大すぎるため、杉原は受け止めることができなかった。手を出せば、すべてを失ってしまいそうな気がして怖かった。

 札幌を出た普通列車は東へ進んでいた。苗穂、白石、平和……、市内の各駅に停車しながら郊外へ向かっていく。新札幌駅を過ぎた頃には、冷え込んでいた車内は乗客の熱とシートの足元から吹き出す暖房によって温もっていた。座席では何人かの客が船を漕ぎ始めていた。杉原にも覚えがあった。冬の夜に飲んだ帰り、足元からの暖気と規則的な列車の揺れによって抗しがたい眠気に襲われる。寝過ごして終点の千歳駅で目覚めたことは一度や二度ではなかった。だが、この日はなぜかまったくと言っていいほど眠気は感じなかった。頭には先ほど耳にした衝撃的な事実が残っていて、神経を昂らせていた。

あの森がプロ野球のスタジアムになるかもしれない

 列車は札幌市を抜け、北広島駅に差し掛かろうとしていた。杉原と川村が並んで座っているロングシートからは南側の景色が見えた。意図したわけではなかったが、正面のガラス窓越しに総合運動公園建設予定地が見える位置だった。杉原は思わず目を凝らした。深さを増した闇の向こうに眠れる森のシルエットが微かに浮かんでいた。

 あの森が東京ドームや甲子園球場と同じように、プロ野球のホームスタジアムになるかもしれない……。杉原は想像してみたが、イメージは形にならなかった。

【次ページ】 翌朝届いた短い文面のメール「昨日の話ですが…」

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