濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
朝倉未来がRIZIN牛久戦後に語った「彼は詐欺師ですよ」その言葉には続きがあった…“逆ブレイキングダウン”的勝利に感じた“格闘家・朝倉未来”の本質
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/05/01 17:02
RIZIN LANDMARK 5にて牛久絢太郎との対戦中に笑みをこぼす朝倉未来
「彼は詐欺師ですよ」話題を呼んだ言葉には続きがあった
3ラウンド、互いの距離が詰まり、打ち合いムードが高まった場面がある。拳を合わせ、未来は笑顔。そこですかさず、牛久がタックルにいった。
「打ち合いは楽しい気持ちになりますね。でも彼(牛久)はこいよって言ったらタックルにきた。詐欺師ですよ」
インターネットでも話題になったこの言葉には続きがある。
「イラッとしたか? しないですよ。それがMMAなんで」
打撃勝負と見せかけてタックルにいくこともあるし、寝技師がパンチでKOすることもあるのがMMAだ。シチュエーションごとの選択肢、技術の順列組み合わせはほとんど無限。他のスポーツ以上に“騙し合い”の要素が強いかもしれない。もしかすると「詐欺師」はほめ言葉で、なおかつ未来は詐欺師よりも狡猾だった。
「つまらない」と答える人は多いだろうが…
もちろんKOできなかったという不満、悔しさは残る。だが騙し合いも含めて、彼は久々のMMAを楽しんでいた。
「RIZINに出始めて、7連勝して、責任感を持つようになってました。(興行を支える)使命的な感じで試合をして。ギリギリのオファーもあったし自分が望んだ試合じゃないことも。でも、この1年何カ月か試合をせず自由にしていて、そこでやっぱり“試合がしたい”、“格闘技が好きだ”って思いましたね」
今回の試合、面白いかつまらないかで言ったら「つまらない」と答える人のほうが多いだろう。筆者もそれは否定しない。ただ計量やコメントまで含めて「見応えがあった」とは言っておきたい。格闘技に、勝ち負けにのめり込む朝倉未来の姿を見ること自体が楽しいのだ。年内にもう1試合したいと未来。狙いはフェザー級のベルトとクレベルへのリベンジだ。その機会がやってきたら、我々も彼自身も今回以上に楽しくなるだろう。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。