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「前沢さん、新球場をつくるんですよね?」ファイターズ番記者の問いに絶句…”幻のスクープ”の全貌「隠し立てはしない。でも書かれるとまずいんだ」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/04/19 06:01

「前沢さん、新球場をつくるんですよね?」ファイターズ番記者の問いに絶句…”幻のスクープ”の全貌「隠し立てはしない。でも書かれるとまずいんだ」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

2023年から日本ハムファイターズの本拠地となった「エスコンフィールド 北海道」

父から言われた「記者ってのは、いい仕事なんだぞ」

 高山は新潟県の内陸部に位置する人口1万人の小須戸という街で生まれた。父は地元紙・新潟日報のサービスセンターに勤務していた。記者ではなく、販売を請け負う仕事だった。たまに本社に顔を出すと、新聞記者たちが生き生きと駆け回っているのを目にするのだという。

「記者ってのは、いい仕事なんだぞ」

 父は口癖のようにそう言った。まだ幼い高山には新聞社の仕事がどういうものか見当もつかなかった。ただ、たしかに同じ新聞をつくって売っているというのに記者の名前はクレジットされ、父の名は紙面のどこにもないのが不思議だった。

 高山は野球少年だった。地元で知られた存在で、高校は野球漫画「ドカベン」のモデル となった新潟明訓へ進んだ。県下の精鋭が集まる明訓では想像を超える競争が待っていた。部員は100人近く、一軍と二軍はグラウンドからして分かれていた。煌々とした照明が灯る一軍の練習場に対し、二軍はガソリンスタンドから漏れる灯りで練習をしていた。高山は二軍暮らしが長かった。だが、3年生の夏を前に一軍メンバーに滑り込むと、甲子園出場をかけた新潟大会で打ちに打って、甲子園出場の重要なピースになった。 

 そして忘れもしない第75回全国高校野球選手権大会4日目、第4試合。新潟明訓は松江第一と初戦を戦った。高山はその試合で同校史上初めてとなる甲子園でのホームランを放ち、春夏通じて初勝利の歓喜をもたらした。内角低めの球を引っ張った感触と、左翼ポール際へ伸びていく白球の軌跡は消えない記憶となった。

野球推薦を辞退「自分は…新聞記者になろうと思います」

 2回戦で敗れて地元に戻ったが、高山を取り巻く景色は一変していた。新聞やテレビに自分の名前が出ていた。電車に乗れば、見ず知らずの人から「明訓の高山さんですよね?」 と声をかけられた。甲子園に出場したことによってスポーツ推薦で大学に進学することも できるようになった。ほとんど夢だと思っていた世界への道が垣間見えていた。 

 だが、高山は野球推薦を辞退した。部の監督にはこう言った。

「自分は選手としてご飯を食べていくことはできないと思います。新聞記者になろうと思います」

 幼い頃から繰り返し聞いた父の声が心のどこかに残っていた。

「記者ってのは、いい仕事なんだぞ――」 

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