「AZMがチャンピオンでなければ絶対に挑戦してない」

「キッドじゃなきゃ意味がない。最多防衛記録はキッドと作りたい。パッと出たような因縁じゃないですから。ハイスピードから始まった話でもあるし」

　そう語るAZM。キッドも「AZMがチャンピオンでなければ絶対に挑戦してない」と明言している。キッドは昨年、AZMに敗れてベルトを失い、それ以降はハイスピード王座を“卒業”した意識でいたのだ。団体の看板である“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダム王座、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座がターゲットだと。

　ただ、2人の闘いが特別なのは、ストーリーだけが理由ではない。AZMは言う。

「昔からの関係というのはもちろんあります。長く見てくれてる人は“親目線”みたいなのもあるでしょうね。でもそれだけじゃない。最近スターダムを見るようになった人たちも、私たちのタイトルマッチが楽しみだと言ってくれるんです」

　長岡での試合がそうだったように、AZMvs.キッドは純粋に試合内容そのものが特別な輝きを放っている。超高速でノンストップでアイディアに満ち、楽しさと激しさが高いレベルで両立している闘い。思わず声が出るような攻防が最初から最後まで続くと言えばいいだろうか。

距離のあるダイビング・フットスタンプはAZMの得意技　©Essei Hara

AZMvs.キッド、約束された名勝負

　ハイスピード戦のレフェリーを務めるバーブ佐々木は、SNSで長岡での試合を「再現性が高い」と称賛していた。代々木での試合後、あらためてその意味を聞いた。

「再現性というのは、動きのことです。たとえばゴルフのスイングにしても、毎回まったく同じベストなフォームでできるわけではないですよね。でも2人の試合は、常に同じ動きができている。だから毎回、確実にいい試合になるんです。フロックじゃない」

　たまたま噛み合ったとか、その時だけいつもより調子がよかったということではないのだ。いわば毎回、約束された名勝負。AZMとキッドのアスリートとしての能力の高さも、対戦が特別なものである理由なのだろう。

「もちろん、今回（代々木大会）もそうなりました」（バーブ）

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