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WBC連続MVP・松坂大輔はなぜ国際舞台に強いのか? 和田毅「とても同級生とは思えなかった」岩隈久志「クマがMVPだよと言ってくれて」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/02/26 17:25
2009年WBCに向けた日本代表の宮崎キャンプでの松坂大輔。WBCでは2大会連続MVPに輝き日本の連覇に大きく貢献した
「当たった瞬間、『あっ! 折れたな!!』って思いましたね。ベンチに戻って来て、腫れ上がっている腕を見て、これはもう絶対、投げられないと思いました」
ベンチ裏ではトレーナーが患部を冷やし、中畑清ヘッドコーチらが心配そうに見守っていた。するとその輪の中心から、和田ははっきりとした松坂の声を聞き取ったのだ。
「『行きます!』って言っていました。周りはみんな『えっ、行けるの!?』みたいな感じでしたけど、大輔だけが『いや全然、大丈夫です!』と言い切ってマウンドに上がっていったんです。相当痛かったと思う。でも再びマウンドに上がって投げているときは、痛がる素振りを全く見せませんでした。やっぱりそこに僕は彼が持つエースとしての自覚、日の丸を背負う責任感を感じた。そのことをはっきりと覚えています」
松坂の背中をずっと見てきた岩隈
そんな松坂の不屈の姿をブルペンから見ていたのは、一つ年下の岩隈久志だった。
「ブルペンも大騒ぎになって心配しましたけど、またマウンドに上がる松坂さんを見て、あのまま投げられる気迫が凄いなって……やっぱりその姿に本当に背負っているものが違うんだなと感じていました」
岩隈が松坂を初めて見たのは、小学生のときだったという。
「実は松坂さんとは小学生のときに一度対戦しているんです。松坂さんが江戸川南リトルにいた、僕が小学校5年生の冬でした」
そのときから岩隈はずっと松坂の背中を見てきた一人だった。
松坂の後を追うようにプロ入りした後は、近鉄と西武と同じパ・リーグのチームのエースとしてしのぎを削り合ったが、岩隈にとってみれば、松坂とは常に仰ぎ見る憧れの存在である。その憧れと同じ日の丸のユニフォームを着て初めて一緒に戦ったのが、このアテネ五輪だったのである。