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牧秀悟はブルペンで何を見てた? 往年の“ドラ1名リリーフ”と大魔神・佐々木主浩は今の投手にどんなアドバイスを?〈DeNAキャンプ観察〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2023/02/11 11:03
ブルペンでビックリした表情の牧秀悟。何を見ていた?
かつてのドラ1名リリーフが見つめたのは…
投手陣の真後ろで、ノックバットを持った老人が投手陣を見つめている。
コーチングアドバイザーの小谷正勝だ。今年4月に78歳になる。永く横浜、ヤクルト、巨人、ロッテなどで投手コーチを務めてきたが、昨年から春季キャンプで投手にアドバイスをしている。
1968年、國學院大學からドラフト1位で大洋ホエールズに入団すると、巨人V9の時代に活躍。1971年にはほとんど救援だけで11勝を挙げている。セットアッパーのさきがけのような投手だった。
小谷アドバイザーは、石田に何事か話している。石田はうなずいて聞いている。さらに、隣のエスコバーにも通訳を介して話しかけた。一番奥の上茶谷とも話している。どんなことを話しているのか? 気になるところだ。
そこへ大魔神こと佐々木主浩が姿を現し、さらに三浦大輔監督も顔を見せた。小谷アドバイザーは入団当初の三浦大輔を指導した投手コーチ、いわば恩師だ。ブルペンの周辺がどんどん豪華になっていく。
佐々木はしばらく投球を見ていたが、小谷アドバイザーと何事か話をしている。
70年代の救援投手の小谷正勝と、90年代の絶対的クローザーの佐々木主浩が、現役の一線級の投手にアドバイスをするという、時空を超えた顔合わせが実現したのだ。
そこに一人の打者がバットを持って入ってきた。牧秀悟だ。
牧は石田のボールを見るために打席に立った。バットを構えて、じっくりと球筋を見極めている。そしてその球を打ちそうな勢いで身体を動かしている。これも3月に迫ったWBCの実戦に向けた練習なのだろうか。それと並行して佐々木が、石田にアドバイスをしている。石田は何事かを佐々木に質問し、佐々木がそれに答えている。
佐々木は上茶谷にフォークの握り方を教えていた
牧は上茶谷大河のボールを見るために、反対側のレーンに移動した。
そのタイミングで佐々木主浩は、上茶谷にもフォークを伝授している。具体的に「握り」まで見せて教えている。
牧が打席に立つなかで、上茶谷が試しに投げ始めた。1球、くくっとボールが鋭い軌道を描いて落ちた。牧が目を見開いて驚いている。まるで劇画の1シーンのような光景が繰り広げられた。
さらに、昨年両リーグ最多の71試合に登板した伊勢大夢がマウンドに上がる。小気味よいリズムで投げ始める。セットアッパーとして長年活躍するのは、並大抵のことではないが、まずは順調な滑り出しか。
石田が佐々木から「すごく勉強になった」こととは
外に出ると、室内練習場の前で石田健大が囲み取材を受けていた。