平山　調教師は馬主さんから預かっているお金を各業者に支払うだけですし、騎手時代はレースにはあまり乗っていませんでしたけど出歩かなかったので、お金に困ることはなかったです。今でも他の調教師から「もっとお金を使え」と言われるくらい（笑）。でも、馬には使っていますかね。馬主さんには請求しないところで馬具を買ったりとか。一度、簿記の勉強をしようかと考えたことがあったんですけどとても無理で、インターネットで調べたり税理士さんに聞きながら勉強しています。

――厩舎を運営する立場になって、大切にしていることを教えてください。

平山　私が騎手時代に苦しい経験をしたこともあって、若手騎手にはなるべくチャンスのある馬に乗せたいな、と思います。休日に他場から勉強のためにわざわざ調教を手伝いに来てくれたら、レースでも乗せられるようにしたりとか。そこで結果が出て、自分の所属競馬場に戻った時にさらに活躍してくれれば一番嬉しいですし、何かきっかけだと思うんですよね。騎手は馬に教えてもらうことも多いです。いまはコロナで他場から来るのが難しくて、私も最近は腰痛で以前ほど多頭数を乗れないので地元の騎手に調教を手伝ってもらうことが多いですけど、調教に乗った騎手がレースでも乗れるよう、なるべく馬主さんにもお願いしています。

40歳を超えて「何をしたいんだろう？」

――いまの女性騎手をどう見ていますか？

平山　私の現役時代に比べると、南関東でもJRAでもまた女性騎手が増えてきていていいことだと思います。昔に比べて男女ともに減量特典を受けられる期間が延びたので、性別に関係なく努力を惜しまないでほしいですね。

　騎手は基本的に中学校を卒業して社会を知らないまま競馬界に入ってくるので、敬語が喋れない子もいます。教えてあげないといけないこともいっぱいありますが、色んなことを吸収しながら期待に応えられる騎手を目指してくれたらいいかなと思います。

――平山調教師ご自身はこれからの将来像はどう描いていますか？

平山　調教師になってから10年が過ぎて、40歳も超えて「何をしたいんだろう？」と改めて考えるんですけど、支持してくださる方が増えて、その期待に応えたいという思いが大きいです。これまでやってきたことは変えずに、1頭1頭と向き合いながら相談してやっていって、ゆくゆくはまた重賞レースを勝ちたいです。

所属馬に頭を下げて、送り出す平山調教師　©Keiji Ishikawa

　＜「騎手時代の苦労」編もあわせてお読みください＞

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。