そもそも、どちらかといえば料理好きな西田に対し、古賀はあまり得意とするタイプではない。だが昨秋の世界選手権以後、体調不良が続いた西田のために「健康的な生活になれば」と手料理を振る舞った。目分量で、このぐらいでいいか、と自分で食べる時と同じ量の調味料を入れて親子丼をつくるも、評価は今ひとつ。

「そもそも1人分の味付けで2人分をつくっているから味がしない。はっきり『これはマズい』と言われました（笑）。豚の生姜焼きをつくった時も豚バラ肉を使ったので脂が多すぎて『最後まで食べれん』と言われたこともあります。『お味噌汁はおいしいよ』と言ってくれるので、これからはもうちょっと頑張ろうかなと思うけれど、まずはお互い1人1人のアスリートとして結果を出すことが第一。料理は引退してから頑張るし、西田くんも今の私に（料理は）期待していないと思います（笑）」

なぜ今、結婚を決めたのか？

　今年5月で27歳になる古賀と、1月30日に23歳になったばかりの西田。晩婚も進む昨今では、早婚の部類に見えるが、それぞれ自立したトップアスリートであり、支え合い、刺激し合える伴侶の存在は力になるであろうことは想像に容易い。

　だがもしも結果が伴わない場合には、結婚をプラスばかりではなく「妻のせい」「夫のせい」と矛先が向けられ、いらぬ批判を受けることにつながる可能性もある。それでもなぜ、現役真っ盛り、ましてやパリ五輪に向けた予選も近づくこのタイミングで「結婚」という決断を下したのか。

　古賀の回答は明確だった。

「結婚って、一大イベントだし、実際私も現役中は結婚するなんて考えもしませんでした。でも、絶対に自分の一番味方でいてくれる人がいるのは心強い。そこに時期は関係ないと思ったし、シーズン中だけど、私はプラスしかないです」

　シーズンオフでもいいのではないか。周囲からのそんな声も聞こえたが、そもそも発想が違う。

Vリーグでも日本代表でも、圧倒的な存在感を示す古賀紗理那　©︎YUTAKA/AFLO SPORT

「Vリーグが終わればすぐ日本代表が始まるので。言えばずっとシーズン中だから、それならばいつ結婚しても一緒だな、と思ったんです」

　交際し始めた当初から「西田くんには『いつ結婚する？』と言われ続けてきたので、自然に結婚を意識してきた」というように、昨年にはごく自然に結婚への意志を固めた。

　お互いが世界選手権を終え、Vリーグが開幕するまでのわずかな間に両家へ挨拶を済ませ、顔合わせの場も設けた。日程や場所、そこまでの飛行機の手配も含め、すべて西田が段取りを進め「ポンポンポン、と進んでいった」。そして、めでたく12月中旬に入籍の日を迎えたのだった。

【次ページ】　「優勝できたね」「そっちはMVPじゃないね」