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野球殿堂にも影を落とす「人気のセ、実力のパ」。
posted2023/02/05 09:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
あるベテラン記者の記憶である。
1985年10月、阪急ブレーブスの本拠地・西宮球場で試合前練習を終えた上田利治監督が、スタンドを見上げてふっと呟いた。
「きょうもお客さんは少ないなあ……何人、入っとるんや?」
そこでそのベテラン記者が一塁ベンチ上の観客を数えて、25人であることを告げる。
「なんや、25人か……25人ならベンチ入りの人数やないか! ベンチに入れたれ、入れたれ! !」
自虐的な笑いを浮かべながら上田は、こう語ってベンチ裏へと消えていったという。
「人気のセ、実力のパ」と言われた昭和のプロ野球。その1つの象徴が当時の阪急だった。福本豊外野手や山田久志投手ら個性的な選手を揃え、'71年から'85年までの15年間で7度のリーグ優勝を飾り、'75年から日本シリーズも3連覇。上田が監督に返り咲いた'81年以降も'84年にリーグを制した。