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ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「口が半開き、返事が返ってこん…」胸下不随となった上田馬之助は、夫人の愛に包まれて…妻が明かす、名レスラーと過ごした壮絶で幸せな日々
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/11/22 17:08
『スナック亜砂呂』時代の上田馬之助・恵美子夫妻をおさめた一枚
亡くなる前日、上田が妻に残していた言葉
事故に遭って以降、ふたりは苦しみもよろこびも分かち合いながら、一心同体のように生きてきたが、上田はある日突然、恵美子夫人を残してひとりで旅立ってしまった。しかし、亡くなる前日、こんな言葉を残していたという。
「そういえば亡くなる前の晩、へんなこと言ってたんですよ。あの人、病院が嫌で、いつも『死ぬときは“上田病院”で死にたい』って言ってたんです。“上田病院”って、この自宅のことなんですけどね。そしたらね、前の晩に『上田病院ですごせてよかった。幸せ、幸せ』なんて言うんですよ。それで『何をいまさら水臭いことを』言うて。そんな話をしてたんです。何か自分で感じてたのかなあ。それに私が早く気がついてやればよかったと思うんですけど」
亡くなる前の晩のその言葉こそ、上田が恵美子夫人に伝えたかったことなのだろう。
上田馬之助の事故からの15年間は、あまりにも辛く苦しい日々だった。それでも最期は、恵美子夫人の愛に包まれたまま、幸せにその生涯を閉じたのだ。
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