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「フェリス卒のお嬢様vsセクシー女優」は熱戦に…スターダム人気女子レスラー・桜井まいの色気と狂気「私は“大人の魅力”で勝負できる」
posted2022/11/18 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
今年、スターダムで最も成長した選手は桜井まいだろう。
もともとタレントとして活動、なかなかうまくいかない現状を打破したいという気持ちもあってプロレスを始めた。2020年にデビューしたリングは、役者やアイドルなど芸能界から選手候補をスカウトしてくるアクトレスガールズ。芸能とプロレスの二足の草鞋が基本だが、活動していく中でプロレスの魅力に惹かれ、もっと打ち込みたいと思うようになる選手も少なくない。
桜井もその1人だった。アクトレスガールズを退団し、スターダムに初参戦したのは昨年8月。その時点でキャリア1年半ほどで、まだまだ新人の域を出なかった。ましてアクトレスガールズは大会数が少なく、その中でも試合が組まれない選手がいる。
より強さを求めた桜井
桜井は試合経験がとりわけ少ない新人だった。業界最大の女子団体であり選手層の厚いスターダムで闘えば、どうしても見劣りする。ただ、見ていて彼女が場違いだとは思わなかった。アクトレスガールズ時代の試合からも「私はプロレスで頑張りたいんだ」、「どうにかしてインパクトを残したい」という気持ちは感じられた。足りないのは経験、それにプロレスラーとして何をやってどう見せるかという方法論だった。
桜井は戸惑いながらスターダムで闘っていたのではないか。参戦表明のマイクでは「強さを求めて」スターダムに来たとアピールしながら、中野たむ率いるユニット、コズミック・エンジェルズ(コズエン)の「華やかなところ」に惹かれたと加入。だが今年に入り、ジュリアの誘いもあってDonna del Mondo(DDM)に移籍した。もともと、桜井はジュリアに憧れていたという。
華やかでアイドル性もあるのがコズエンだが、桜井はより強さをもとめてDDM加入を選んだと言っていいだろう。ジュリアはそんな桜井を厳しく、並外れた熱意をもって指導した。桜井はジュリアが驚くくらい「何もできなかった」。それでも自分を慕ってついてきたこと、プロレスに専念しようとスターダムに来たことを後悔させたくなかったという。自分にはそれだけの責任があるのだとジュリアは言った。
毎日プロレスのことばかり考える生活が始まった。桜井もDDMのメンバーに驚いた。練習が終わって食事に行っても、プロレスの話、DDMをこれからどうしていくかという話ばかりしている。とにかく必死に練習するしかなかった。
“お嬢様育ち”でも目立ってきた負けん気
その成果は少しずつ出るようになった。ジュリアと組んでタッグ王座に挑戦。ハードコアマッチ初体験もジュリアとのタッグだった。夏のリーグ戦、5★STAR GP出場権をかけた若手リーグを勝ち抜き、本戦出場。シングルマッチが12戦続く長丁場は負け越しという結果ではあったが、同門のひめか、コズエンのウナギ・サヤカといった格上の選手に勝利を収めている。元アイスリボン王者の世羅りさとはドローだった。このリーグ戦の期間で、桜井はスターダム参戦1周年を迎えた。