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里見香奈女流五冠「初の女性棋士」条件は“残り3戦で3勝”… なぜ将棋界は「四段昇段=プロ認定」なのか〈田丸昇九段が解説〉

posted2022/09/29 11:02

 
里見香奈女流五冠「初の女性棋士」条件は“残り3戦で3勝”… なぜ将棋界は「四段昇段=プロ認定」なのか〈田丸昇九段が解説〉<Number Web> photograph by Kyodo News

「プロ編入試験」第2局に敗れた里見香奈女流五冠

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 里見香奈女流五冠(清麗・女流王座・女流王位・女流王将・倉敷藤花=30)は「プロ編入試験」に挑んでいるが、第1局に続いて9月22日の第2局も敗れ、後がない状況に追い込まれた。この2局と将棋界の棋士認定の経緯について田丸昇九段に記してもらった。

 里見女流五冠は、昨年7月から今年5月までのプロ公式戦で、若手精鋭の棋士らを破って10勝4敗の好成績を収めた。そして《10勝以上・6割5分以上の勝率》の条件を満たし、「プロ編入試験」の受験資格を得た。6月に受験を表明し、7月に開かれた記者会見では「自分の実力からすると難しい戦いになると思いますが、力を出し切れるように対策を練っていきたい」と、控えめに意気込みを語った。

 里見女流五冠は8月18日のプロ編入試験(持ち時間は各3時間)第1局で、今春に棋士になった徳田拳士四段(24)と対戦した。徳田は棋士デビュー戦から同日の時点で、公式戦で12勝1敗という抜群の成績を挙げて勝率トップだった。

研究パートナーの菅井八段も解説で見守ったが

 この一局で里見は武器にしている「中飛車」戦法を用いた。中盤で軽くさばいて有望な戦いとなったが、好機を逃して次第に苦しくなった。徳田は自陣に守り駒を投入し、里見の懸命な攻めを振り切った。勝率1位の棋士らしい安定した勝ち方だった。

 私こと田丸昇九段の感想は、里見の指し方は全体に硬かったように思えた。通常の対局とは違う緊張感がやはりあったようだ。

 里見女流五冠は9月22日の第2局で、今春に棋士になった岡部怜央四段(23)と対戦した。里見は第1局に続いて中飛車を用いた。長い駒組み手順を経て戦いがようやく始まった。岡部は中盤で強引な攻めにいったが、結果的に駒損となった。里見は自陣をがっちり固め、AI(人工知能)の形勢数値は《72ー28》で優勢を示した。その直後、岡部の攻めに対して、里見の▲2七金の受けが悪手だった。

 ABEMAの中継番組で解説者の菅井竜也八段は「里見さんがようやく良くなったところで、▲2七金が甘い手。▲5八歩と守っておけば……」と、嘆息するように語った。菅井は里見の研究パートナーでもあった。

 里見が▲5八歩と指せば、難しい形勢ながらも最終的に勝てたのでは、と推測する。▲2七金以降は、岡部に猛攻されて不利に陥った。持ち時間を使い切って1分将棋の秒読みまで頑張ったが、挽回できずに敗れた。

「出雲のイナズマ」らしい思い切った指し方を

 筆者の感想としては、里見は絶対に負けてはいけないという緊張感から、積極性が欠けていると思った。

 里見はプロ編入試験で2連敗し、後がない状況に追い込まれている。残りの3局を全勝するしか合格への道はない。第3局は狩山幹生四段(20)と10月13日に対戦する。「出雲のイナズマ」という異名のような思い切った指し方を見せてほしい。

【次ページ】 将棋界と囲碁界の制度上の違いとは何か

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