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“藤井聡太くんが大泣き”から10年後の公式戦初対局…「高校を自主退学して将棋に専念」“藤井世代”伊藤匠五段と藤井五冠の共通点とは
posted2022/09/14 17:00
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
JIJI PRESS/Takuya Sugiyama
藤井五冠と伊藤五段には、いろいろな共通点がある。
藤井は2002年7月19日生まれ。伊藤は同年10月10日生まれ(現時点で最年少棋士)。ともに5歳で将棋を覚えた。藤井は地元の愛知県瀬戸市の将棋教室に通い、同県出身の杉本昌隆八段の門下に入った。伊藤も同じく東京都世田谷区の将棋クラブに通い、師範の宮田利男八段の門下に入った。
両者は高校時代、将棋に専念するために高校を自主退学した(藤井は3年時、伊藤は1年時)。
伊藤は2010年の全国小学生倉敷王将戦・低学年の部で準優勝した。同じく出場した藤井は上位に勝ち進めなかったが、2011年の同王将戦で優勝した。
小学生の頃から藤井について「あの子、強いよ」
2012年1月に小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会が都内で開かれ、藤井と伊藤が代表となって出場した。藤井の強さをすでに知っていた伊藤は、友人に「あの子、強いよ」と言ったという。藤井と伊藤は小学3年の部で勝ち進み、両者は準決勝で対戦した。そして、伊藤が勝った。
負かされた藤井がわんわんと声を上げて大泣きすると、同伴した母親は平然とした様子で見守っていたという。負けて泣くのは、いつものことだった。その後、藤井は3位決定戦で泣きながら指して勝った。審判長の森内俊之名人が入った記念写真には、表彰状を持った伊藤(準優勝)、泣きはらした顔の藤井らが写っている。
藤井は2012年9月に奨励会(棋士養成機関)に6級で入会。伊藤は2013年9月に奨励会に6級で入会。伊藤は1年後れの入会だったが、以後の昇進ペースで藤井に大きく引き離された。藤井が2016年9月に最年少記録の14歳2カ月で四段に昇段して棋士になったとき、伊藤はまだ初段だった。
藤井は公式戦デビューから最多記録の29連勝を達成した。メディアはその快進撃に注目し、小学生時代に伊藤に負かされたエピソードを取り上げた。伊藤は「藤井を大泣きさせた」として話題になった。ただ本人にとっては過去のことだ。現実を見ると、悔しさだけが募ったに違いない。
藤井の中学生での棋戦優勝を記録係として見た
2018年2月、朝日杯将棋オープン戦の準決勝・決勝の対局が都内ホールで公開で行われた。
藤井五段は羽生善治竜王、広瀬章人八段を連破し、中学生で初の棋戦優勝という快挙を果たした。その対局で記録係を務めたのが伊藤三段だった。伊藤は同じ中学生として、多くの報道陣に囲まれた藤井を複雑な思いで見たことだろう。