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「スゴすぎる腹筋」と話題になった走幅跳・秦澄美鈴26歳が語る“陸上選手と盗撮被害”「個人がユニフォームを選べるようになればいい」 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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photograph by本人提供/Takuya Sugiyama

posted2022/10/04 11:06

「スゴすぎる腹筋」と話題になった走幅跳・秦澄美鈴26歳が語る“陸上選手と盗撮被害”「個人がユニフォームを選べるようになればいい」<Number Web> photograph by 本人提供/Takuya Sugiyama

世界陸上にも出場し、「美しすぎる腹筋」も話題となった秦澄美鈴選手

アキレス腱の“驚異的な硬度”が高いジャンプを生む

 秦のジャンパーとしての強みは腹筋というより、類まれなるアキレス腱の硬さだろう。母校の武庫川女子大学で腱硬度を超音波で測定したところ、他の跳躍部員の平均値が80だった一方、秦はその5倍にあたる430という驚異的な硬度を記録した

「私のアキレス腱は細くて長くて硬いみたいで。アキレス腱の太さは変えられるけれど、長さは変えられないそうで、それは天性のものだと言われてきました。ジャンプって色々な動きがあって、例えばバレーボールのスパイクのように膝の屈伸を使って飛ぶ動きもあれば、走高跳のように全身を棒みたいにして、屈伸をあまり使わずに跳ぶものもある。

 私はどちらかと言うと、膝の屈伸をあまり使わないジャンプが得意で、短い接地でも高く跳べるんです。やっぱり腹筋というより、腱が硬いことによって、短い接地でもより大きな反発が得られるのが私の強みだと思います」

 今季は加えて、下半身の力とのバランスを保ち、向かい風に負けない体幹を作るため、上半身のトレーニングを重視してきた。美しい腹筋はこうしたトレーニングの“副産物”でもあるのだろう。

「トレーニング中は体幹をぶらさず、腹圧を抜かないようにと常に意識しています。やっぱりどの部位を動かすにもお腹に力を入れるのは必須なので、自然にだんだんと腹筋がついていったのかもしれません」

「気持ち悪かったです」選手が明かす“盗撮被害”

 秦の腹筋にこれだけ注目が集まったのは、上下が分かれたセパレート型のユニフォームを着用していたからだろう。仮に男性選手に多いシャツタイプのユニフォームを着ていたら、ここまで腹筋が話題に上ることはなかったのではないか。

 その半面、露出の多いセパレート型ユニフォームを着用する選手は度々、悪質な盗撮の標的とされてきた。秦も学生時代からセパレートタイプを着用することで、嫌な思いをしたことがある。

「セパレートの上の部分に関しては、私は特に何とも思っていません。問題は下のユニフォームだと思うんですよね。やっぱりスパッツ型よりショーツ型のほうが変な写真を撮られやすい。私も元々はショーツ型のユニフォームを着ていましたが、盗撮目的ではなく普通のメディアの写真でも『この角度の写真使われるんだ……』って嫌な思いをしたことがあります。私は自衛策として、2021年からはスパッツ型を着るようにしました。

 走高跳をやっていた頃も、バーを超える瞬間を正面から撮っているグレーな写真を見ました。どうしても脚を開いているし、ショーツの形も際どいので、こんな写真が広がったらと思うと気持ち悪かったですね……。撮影を規制したとしても、怪しい角度から撮りたがる人はいるだろうし、被害をゼロにするには、ユニフォームを変えるしかないのかなと思ってしまいます」

【次ページ】 「選手個人がユニフォームを選べるようになればいい」

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