なつぽいがDDMを脱退した本当の理由

　名古屋と後楽園での2連戦、きっかけを作ったのはなつぽいだった。昨年末に白いベルトを失ったたむを「気持ち悪いんだよね」と挑発したのだ。

「ベルトと一緒に、ドロドロした感情むき出しのたむちゃんも消えちゃったのかな。引退でもするの？」

　2連戦を終えると、たむは言った。

「たむは引退なんかしない。なっちゃんのことも絶対、引退させないから」

　たむから見ると、私も「つまんなそう」だったんだろうなとなつぽいは思った。タイトルマッチでたむと闘った時のようなドロドロが、他の選手との試合では出せていなかったのかもしれない、と。

「このままじゃダメだなとは思ってました。もっともっと上に行きたいって。自分にはやりたいこと、行きたい道がある。たどり着きたい夢があるんです。でも今のままでそれができるのかも疑問で」

　DDMはアベンジャーズのようだとなつぽいは考えていた。中心にジュリアがいる。頂点のベルト、ワールド・オブ・スターダムを持つ朱里も以前は所属していた。一緒に6人タッグ王座を獲った舞華とひめかは団体屈指の大型パワーファイターだ。

「その中で私は、ハイスピード王座を狙う小さくて動けるタイプ。それはそれでいいんですけど、自分からそのイメージにとらわれるようになってたんです。強い選手ばかりのDDMの中で、自分は脇で盛り上げるバイプレイヤーとかマスコット的存在なんだって。“マスコットでも結果を出せばいいんだから”みたいに考えてましたね。上を目指してるのに、自分で自分の可能性にフタをしちゃってたんですよ」

後楽園でのたむ戦、なつぽいは得意のフェアリアル・ギフト（側宙式ボディプレス）をなんと5連発。勝利への執念を見せた　©Norihiro Hashimoto

「“心の底から潰してやりたい”と思われたかった」

　たむと組むことで、可能性は広がると考えた。たむと組む、イコールDDM脱退だ。バックステージで、あるいはマイクアピールでそれを言えば、ジュリアは認めてくれただろう。「ジュリアちゃんは心が広いし愛が深いので」。でも、言葉だけで終わりにしたくなかった。試合中の裏切りについて、なつぽいはこう振り返る。

「どうしてDDMを抜けるかと言ったら、上に行くため。上に行くには強い選手たちとバチバチやり合わなきゃいけない。今までたむちゃんとぶつかり合ってたみたいに、これからはDDMの選手と心の底からぶつかりたかったんです。

　ジュリアちゃんは私のことを、本当の意味でライバルだと思ってなかったはず。ひめかも舞華ちんもかな。DDMは同門対決でも遠慮しませんけど、やりたいのはそのレベルじゃない。DDMのみんなに“心の底から潰してやりたい”と思われたかった。だから試合中に行動に出ました。向こうからしたら一番、腹が立つ形を狙って」

なつぽいがDDM脱退を告げると、ジュリアの目は険しいものに　©Norihiro Hashimoto

　ジュリアには「あんたは今日から敵。徹底的にやってやるよ」と言われた。なつぽいとしてはそれでよかった。覚悟を決めての行動だったから、DDMファンからの批判も気にならなかった。

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