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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平エンゼルス入り決定の瞬間…“熱血GM”が尻もちをついた2回目の電話「一つ言い忘れたことがあってな」
posted2022/08/26 11:02
text by
ジェフ・フレッチャーJeff Fletcher
photograph by
Getty Images
エンゼルス加入時から大谷の取材を続ける番記者、ジェフ・フレッチャー氏の著書『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(訳・タカ大丸、徳間書店刊)から、ビリー・エップラーGM(当時)の証言をもとに獲得レースの舞台裏を明かした章を抜粋して紹介する(全2回の2回目/1回目はこちら)
この翌日、マリナーズが大谷と面談した。
同じくアメリカン・リーグ所属ということで、二次選考の7球団の中では優位な位置にいると思われ、しかも、日本人も多く住んでおり、イチローが歴史をつくったことは今さら繰り返すまでもない。マリナーズは、7球団の中では2番目となる155万ドルを提示して会合を始めた。
マリナーズが大谷と面会した次の日に、マリナーズとエンゼルスの決闘となり、両球団がミネソタ・ツインズから追加で100万ドルの枠を受け取った。これでエンゼルスの提示額は231万5000ドル、マリナーズは255万7500ドルになった。
さらに翌日、マリナーズがマイアミ・マーリンズから枠を受け取り、再び提示額を吊り上げた。マリナーズは俊足のディー・ゴードン二塁手と100万ドルの追加予算枠を受け取り、レンジャーズの提示する353万5000ドルをわずかに上回った。
マリナーズにはすでにオールスター級の二塁手ロビンソン・カノがいるので、まだ3800万ドル分の契約が残っているゴードンとの交換で、二人の有望なマイナー選手をマーリンズに放出した。
このトレード劇は、大谷獲得のために100万ドルの枠を獲得できるなら意味のあるものだと論評された(マリナーズが大谷獲得から降りたのはそれなりに合理的な判断で、ゴードンにセンターを守らせたいという意図もあった)。
野球界全体としては、獲得競争でマリナーズが一歩先を行ったのではないかという見立てが強かった。大谷が実はアナハイムに向かっているという事実に気づいているのは、まだごく少数だった。
「エンゼル・スタジアムを見たい」
マリナーズがゴードンのトレードを成立させたちょうどそのころ、バレロはエップラーに電話を入れて、大谷がエンゼル・スタジアムを見たいと、CAAのオフィスを出てフリーウェイへ向かったと伝えた。
エンゼルス側はもう一度、大谷に売り込める絶好機がきたと大喜びだったが、一つ問題があった。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のフィラデルフィア・イーグルスがエンゼル・スタジアムを使用中だったのだ。イーグルスは前の週にシアトルで試合をこなし、ロサンゼルス・ラムズとの対戦を控えて二度も大陸横断をしたくなかったので、西海岸にとどまって練習でエンゼルスのスタジアムを借りていたのだ。