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石川祐希が「絶対的な存在」と信頼される理由とは? バレー代表初選出の23歳が証言「何かあればすぐ俺に聞きに来ていいよ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byItaru Chiba
posted2022/07/24 11:02
ネーションズリーグを5位で終えた男子バレー日本代表。好調なチームを引っ張ったのが、キャプテン石川祐希だった
村山にとって日本代表デビュー戦となったのはネーションズリーグ初戦。出番はオランダに第1セットを先取された第2セット、17対22という場面で訪れた。劣勢の試合展開だったが、直後にブロックとサーブで挙げた村山の得点が相手に傾いていた流れを一気に引き寄せる。そのプレーが起爆剤となり、ジュースの末に26対24で第2セットをもぎ取った日本は、セットカウント3-1の逆転勝利を収めた。そしてこの開幕戦勝利が、のちの好成績へつながるきっかけとなった。
そのオランダ戦でも石川の助言が大きかった、と村山は言う。
「最初はわからないことだらけで、どうしたらいいのか悩むことも多かったんです。でも祐希さんから『何かあればすぐ俺に聞きに来ていいよ』と言われたので、遠慮せず戦術やバレーに対する考え方を聞きました。オランダ戦で祐希さんの隣でブロックに跳ぶ時も『全部に行こうとしすぎず、このコース、とある程度(ヤマを)かけてもいいよ』と言われて、迷わず、楽しんでプレーすることができました。
『ネーションズリーグのファイナルラウンド進出を目標にしよう』と決めた最初の選手ミーティングの時から、僕からすれば祐希さんの話は、そのまま監督から言われているような感じで、祐希さんが話すと自然にチームが締まって、一体感が生まれた。祐希さんについていけば勝てると思えたし、このチームにとって絶対的な存在でした」
石川が何度も求めていた「個人の成長」
昨年の夏、29年ぶりのベスト8進出を決めた東京五輪を終えた後、石川が何度も繰り返した言葉がある。
「オリンピックに出るだけでなく、オリンピックで勝つ、メダルを獲るチームになるためには、個々の力を高めることが不可欠」
石川自身もその言葉を体現するがごとく、世界最高峰リーグの1つであるイタリア・セリエAのミラノで主軸として活躍した。リーグ成績を5位で終えながらも、目標としていたプレーオフベスト4進出が果たせなかったことに、「過去イチの成績を残せたけれど、過去イチ悔しい」と振り返る様子は、“セリエAに挑戦する若者”ではなく、“世界のトップ選手”そのものだった。
石川に続くように、西田と高橋藍はイタリアへ、関田はポーランドへ渡って自信をつけ、大塚達宣は早稲田大に在学しながらVリーグ・パナソニックで経験を積んだ。長年の課題とされてきたミドルブロッカーも、山内晶大や小野寺太志、高橋健太郎が存在感を発揮。一度はネーションズリーグの14名から落選したアウトサイドヒッター高梨健太は、解説を務めた日本代表OB福澤達哉氏が“悪球打ちの名手”と称したように、ハイセットを決めきる攻撃力の高さを随所で見せつけ、準々決勝のフランス戦もスタメン出場を果たした。