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格闘技PRESSBACK NUMBER
東京ドームで芦澤竜誠と“狂気のケンカマッチ”を行うYA-MANの二面性とは… 会見で“ブチ切れ乱闘騒ぎ”も「自分の武器は戦略力」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/06/18 17:01
『THE MATCH 2022』で“K-1の問題児”芦澤竜誠と対戦するYA-MAN。両者は会見で乱闘騒ぎを起こしており、試合前の視殺戦からも目が離せない
ダウンの応酬の最中に見せた「狂気の微笑」
たとえば、今年4月2日の伊藤澄哉戦。女子ムエタイの世界王者として有名な伊藤紗弥の実兄で地下格闘技17戦全勝(15KO)というレコードの持ち主を相手に、YA-MANは得意のオープンフィンガーグローブマッチに臨んだ。
先にピンチに陥ったのはYA-MANの方だった。伊藤の飛びヒザ蹴りと左ストレートで眉間をカット。出血してしまったのだ。眉間からの出血の場合、鼻や口に血が入るので呼吸がしづらくなる。当然、目に入れば視界も遮られる。試合時間が長引けば長引くほど不利になる。あとがないYA-MANはパンチの連打で先制のダウンを奪うが、伊藤はすぐ右ストレートでダウンを奪い返す。ダウンの応酬という修羅場になった瞬間、YA-MANの脳裏には焦る自分ではなく、狂気の自分が頭をもたげた。だから微笑を浮かべた。理解不能なYA-MANの表情に大観衆はどよめいた。
「血まみれになりながらダウンを奪われても笑っている奴ってヤバいじゃないですか」
その刹那、YA-MANは左右のフックで立て続けにダウンを奪い、伊藤に引導を渡した。まさに肉を斬らせて骨を断つ激闘だった。
それにしてもダウンを奪われながら、なぜYA-MANは笑うことができたのか。
「狂気をはらんだ自分が、恐怖心をなくしてくれたんだと思います」
しかも激闘の最中、YA-MANにもうひとりの冷静な自分がこう囁いていた。
「伊藤はここを狙っているよ」
果たしてその囁きは的中していた。逆転に次ぐ逆転のKO勝ちの裏には、こんな知られざるエピソードが隠されていた。表裏一体で存在するふたりの自分を、いかにコントロールするか。YA-MANの強さの秘密はズバリそこにある。また別の角度から強さを繙いていくと、YA-MANの「別に自分は身体能力が特別高いわけでもなければ、パワーがあるわけでもない」と自分を客観視できる視野の広さにも行き着く。
「自分が秀でている部分は戦略力だと思う。相手はこういうふうに攻めてくるだろう。だったら、こういう攻撃を狙おう。そういう戦略が最近は全部ピッタリとハマっているんですよ」