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Bリーグの熱狂を支える“フロアマーキング”のヒミツ、知ってる?「選手が滑ると、影響を疑われることも…」担当者の本音を聞いた
posted2022/06/19 11:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
近年、駅や商業施設の床には、案内やソーシャルディスタンスなどを示す粘着シートがいたるところに貼られ、彩り豊かになった。
このシートは“フロアマーキング”と呼ばれ、スポーツの場でも活躍している。バスケットボールコートのセンターを飾る巨大なクラブロゴもそう。これがないとアリーナの熱狂は損なわれてしまうだろう。
さて、Bリーグに所属する秋田ノーザンハピネッツなどのホームゲームで使用されるフロアマーキングを手がけるのは、プリンテック株式会社。製作管理グループの安藤毅さんが言う。
「Bリーグ以前のbjリーグ時代は、既存の粘着シートのロゴを使用していましたが、一度きりしか使えない。Bリーグ発足に伴い、シーズンを通じて何度も使えるシートを開発することになったのです」
営業担当の“元Bリーグ選手”が力説
そして同社が2年がかりで完成させたのが「フロアマーキングWD」。これは特殊な素材でフロアに設置。選手の激しい動きにも耐え、剥がしてもべタつかないため再利用が可能になった。滑りによるケガを防ぐために、表面のラミネート加工も一からオリジナルのものを開発した。
「試作品ができるたびに選手に検証をしてもらい、さまざまなシューズとの相性をチェックし、綿密にアンケートを取ってきました」
こうして完成したフロアマーキングWDのクラブロゴは、秋田ノーザンハピネッツ(横6100mm×縦3905mm)のデザインで約35万円。ファンの方は、これでリビングのフロアを飾ってみてはいかがでしょう。
Bリーグでは激しい攻防が繰り広げられるゴール付近のペイントエリアにも、チームカラーの同製品が貼られている。営業グループの堀川竜一さんが苦笑交じりに言う。
「過去、このエリアで選手が滑ったりすると、ウチの製品の影響を疑われることもありました。選手はプロになって初めてフロアマーキング上でのプレーを経験するからです。実は私自身も3年前までBリーグでプレーしていて、要望を言う側でした。でも、自分がここで働き始めて、この製品がプレーヤーズファーストで作られていて、滑りにくくプレーにもほとんど影響を及ぼさないことがわかったんです」
かつての選手がメーカー側にまわり、製品の良さを訴える。これほど説得力に満ちたアピールはないのである。