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“絶対の寝技”はグレイシーの再来か…クレベル・コイケが“悪童”に完勝、RIZINフェザー級の中心は誰に?「アサクラともう一回、かな」
posted2022/05/27 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
RIZINフェザー級、そのトップ戦線は動き続けている。
朝倉未来と斎藤裕が同級王座を争ったのは一昨年11月のこと。判定で勝利した斎藤だが昨年10月の防衛戦で牛久絢太郎に敗れる。牛久は今年4月、斎藤とのリマッチにも勝利した。
だがこの間、勝ち続けてきたファイターは牛久だけではない。日系ブラジル人のクレベル・コイケもいる。ポーランドのビッグイベントKSWでベルトを巻き、2020年大晦日にRIZIN初参戦。以後すべての試合で一本勝ちを収めている。とりわけインパクトがあったのは、RIZINの看板選手の1人である朝倉未来を三角絞めで失神させた一戦だ。
クレベルが所属するのは、静岡県磐田市にあるボンサイ柔術。ブラジルの道場の支部であり、創設者の息子たちが“出稼ぎ”に来た日本で作った支部になる。日本は彼らにとってルーツの土地であり柔術のルーツでもある。クレベルは家族とともに14歳で来日。日本で柔術を始め、MMAでも活躍するようになった。
クレベルの同い年の先輩であり道場を設立した一家のホベルト・サトシ・ソウザはRIZINのライト級チャンピオン。彼らは同じアパートの一室で暮らしていたことがある。不況による“派遣切り”で工場での仕事を失い、帰国した仲間や家族もいた。そんな中で柔術の研鑽を積み、今は日本最大の格闘技イベントで活躍しているのだ。
“悪童”萩原戦、クレベルはバックチョークを予告
4月17日にはサトシがMMAキャリア唯一の敗北を喫したジョニー・ケースに一本勝ちしてライト級王座を防衛した。続く5月5日の『RIZIN LANDMARK vol.3』にはクレベルが出場。LANDMARKシリーズは会場を明かさずに行なうネット配信主体の大会。クレベルのような連勝中のトップコンテンダーはナンバーシリーズ(大会場での本大会)に出場することが多い。ただ今回はフェザー級王座挑戦を見据えるクレベルが「試合間隔をあけたくない」と、このタイミングでの出場を望んだという。
対戦相手は萩原京平。地下格闘技から成り上がり、RIZINでは平本蓮のMMAデビュー戦の相手を務めて圧勝したことで知られる。いわゆる“悪童”タイプの魅力がある選手だが、朝倉未来には判定負け。今年3月には弥益ドミネーター聡志のグラウンド技術に捕まり一本負けを喫した。
トップ戦線の壁を突き破りたい萩原にとって試練でありチャンス。単純にキャリア、闘いぶりを比較するとクレベル優位だが、スタンドで“一発当たれば”という期待感もあった。萩原は試合前「秘策は“気持ち”」、「初心に帰った」と語っている。今回に関してはテクニックや試合運びはポイントにならない、というわけだ。
クレベル側にとっては、注意すべき点は打撃だけだった。萩原が寝技を磨いてきたところで負けるとは思えない。「心配なのは右ストレートと後ろ回し蹴り。1ラウンドだけ気をつければ問題ない」と語っていたのはサトシ。クレベルはバックチョーク(裸絞め)でのフィニッシュを予告した。