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プロ野球PRESSBACK NUMBER
誰もが目を疑った“ノムさんの涙”…17年前、なぜ野村克也は人前で泣いたのか?「志太さんには申し訳ない」「サッチーと大げんかしたんだ」
posted2022/06/02 11:02
text by
加藤弘士Hiroshi Kato
photograph by
JIJI PRESS
当時の番記者が関係者の証言を集め、プロ野球復帰までに迫ったノンフィクション『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)が5刷とベストセラーになっている。
そのなかから、2005年末、野村克也が涙ながらにシダックスに別れを告げる場面を紹介する(全2回の1回目/後編へ)。
「ノムさん清原獲り」何でも記事になった
2005年、師走。
野村はプロ野球界に戻った。
12月2日には仙台市内のホテルで楽天監督の就任会見に臨んだ。3年契約で契約金1億円、推定年俸1億5000万円。会見場には130人もの報道陣が集結した。あまたのフラッシュに照らされながら、弱小球団の再建へ、眼光鋭く40分にわたって意欲を語った。
「年齢も年齢で、おじいさんの年代に入ったから、思い切ったことができるんじゃないか。万が一、失敗しても失うものは何もない」
「他球団では一からだが、今回はゼロから。苦労するのは予想がつく。私は弱小球団、最下位のチームと縁がある。南海、ヤクルト、阪神と弱い球団ばかりだったから、弱者の戦略は染み付いている」
「選手に厳しくなることは当たり前。タレントじゃないから、茶髪、長髪、ひげは認めない。お坊さんが修行するように、頭を丸めるぐらいの気持ちで来てほしい。不平不満は結構。それをぶつけるところさえ間違わなければ、エネルギーになる」
新興IT球団とプロ野球界のオーソリティーともいえる名将との掛け算は、魅力的だった。何でも記事になった。
「ノムさん清原獲り」
「ノムさんがロジャー・クレメンスへラブコール」
「ノムさんがメッツ・石井一久逆転獲得へ秘策アリ」
新天地での野村は舌もなめらかだった。楽天の番記者にはリップサービスを惜しまなかった。シーズンオフのネタ枯れの時期。スポーツ各紙はその一挙手一投足を報じた。
誰もが目を疑った“野村の涙”
監督就任会見から1140日。
シダックスに別れを告げる日がやってきた。
12月19日、渋谷のシダックスビレッジで行われた、志太(勤会長〈当時〉)の主催による送別会だ。
会の冒頭では志太が3年間のねぎらいとともに、はなむけの言葉を送った。